年を重ねるほど幸せになる!? “社会情動的選択性理論”が示す心の変化とは【眠れなくなるほど面白い 図解 認知バイアス】

年をとると幸せになるって本当?
【社会情動的選択性理論】

ポジティブ思考になる認知バイアス

若い頃は感情の起伏が激しかった人が、年をとるにつれて温和になっていく、というケースがあります。これは、悟りを開いたとか認知機能が低下したとかではなく、ネガティブなことへ注意が向きにくくなる思考の変化が大きな原因です。思考に影響を与えるという点で、これも認知バイアスの1つといえます。この現象は「社会情動的選択性理論」と呼ばれます

島井哲志教授らの研究によると、50歳以上になると年齢とともに主観的幸福感が増すことが示されています。年をとると、残りの人生を幸福に過ごすためにポジティブな情報に目を向け、ネガティブな情報を気にしなくなる、という心的機能が働きやすくなるのです。客観的な幸福度はさておき、主観的な点でいえば年をとるほど幸せになるのは確かなようです。

ただ、八木彩乃らの研究では、認知機能の一部である「実行機能」の低い人は、60代から心の疲労度が再び高まり、幸せを感じにくくなることも指摘されています。実行機能とは、思い込みや決めつけにとらわれず、自分をコントロールできる力のこと。いってみれば、認知バイアスに翻弄されない力ということです。これを意識して生きていけば、年齢に左右されて偏屈や頑固になることもなく、より幸せを感じながら人生を楽しめるでしょう。

年をとるとポジティブなことに目が向くように

社会情動的選択性理論 = ポジティブ感情が最大になり、ネガティブ感情が最小になる現象

年をとるにつれてネガティブなことにあまり意識が向かなくなっていく

認知バイアス

年をとると心の疲労度が低くなっていく?

実行機能( 認知機能の一部)の高い人は疲労度が低くなっていくが実行機能の低い人は60代から再び疲労度が上がっていく

※ 『高齢者の幸福感の縦断的変化:認知機能の影響』より

参考文献

  • Rosemarie Kobau, Marc A Safran, Matthew M Zack, David G Moriarty and Daniel Chapman, “Sad, blue, or depressed days, health behaviors and health-related quality of life, Behavioral Risk Factor Surveillance System, 1995-2000,” Health and Quality of Life Outcomes: 2-40, 2004.
  • 島井哲志/山宮裕子/福田早苗『日本人成人の主観的幸福感:加齢による上昇傾向』日本公衆衛生雑誌:65(9)、553-562、2018年。
  • 八木彩乃/野内類/村山航/榊美知子/川島隆太『高齢者の幸福感の縦断的変化:認知機能の影響』日本心理学会大会発表論文集:日本心理学会第83回大会、2019年。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 認知バイアス』監修:高橋 昌一郎

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 認知バイアス』
監修:高橋 昌一郎

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