反論っぽくて反論じゃない!?「ご飯論法」とはぐらかしの技術【眠れなくなるほど面白い 図解 認知バイアス】


論点を巧みにすり替える藁人形論法
【藁人形論法】
相手の主張を歪めて自身を正当化
話題のニュースや出来事を紹介して、コメンテーターに語らせるワイドショーやトークバトル系のテレビ番組で多用されているロジックの1つが「藁人形論法」です。聞いただけではどんな論法なのか、まったくピンと来ない人のほうが多いと思います。
この藁人形論法というのは、相手の主張を正しく引用せず、自分に都合よく解釈を変えたり、論点を歪めたりして反論する論法のこと。
上の図を例にすると、妻の「少しお酒を控えて」という主張を、夫は「酒もタバコも全部禁止」と拡大解釈し、それに対して「だったらお前もお菓子を食べるな」と極端な反論をして論点をすり替えています。この夫の自分勝手な解釈(歪められた主張)と、それに対する反論こそが藁人形論法なのです。藁人形と同様、議論の中身が伴わないことに由来し、藁人形(ストローマン)論法と名付けられました。
もう1つ、巧みに論点をはぐらかすテクニックとして、「ご飯論法」というのがあります。それを表した図が下段の図です。妻の「ご飯食べた?」という問いかけに、夫は「食べてないよ」と答えていますが、「パンを食べた」ことは伝えていません。結果、余計な嘘はつかず、かつ真実もいわずに質問をはぐらかすことに成功しているわけです。
相手の主張を歪めて議論を有利に
『藁人形論法』とは、相手の主張を正しく引用せず、都合よくねじ曲げて論点をすり替える論法である

嘘をつかずに話をはぐらかす「ご飯論法」

参考文献
- Edward Damer, Attacking Faulty Reasoning: A Practical Guide to Fallacy-Free Arguments, Cengage Learning, 2008.
- Bowell Tracy and Kemp Gary. Critical Thinking: A Concise Guide, Routledge, 2015.
- Eugen Zechmeister and James Johnson. Critical Thinking: A Functional Approach. A Division of International Thompson Publishing, 1992.
- [E.B.ゼックミスタ/J.E.ジョンソン(宮元博章/道田秦司/谷口高士/菊池聡訳)『クリティカルシンキング 実践篇』北大路書房、1997年。
- 伊勢田哲治/戸田山和久/調麻佐志/村上祐子(編)『科学技術をよく考える クリティカルシンキング練習帳』名古屋大学出版会、2013年。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 認知バイアス』監修:高橋 昌一郎
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 認知バイアス』
監修:高橋 昌一郎
「認知バイアス」は物事の判断が、偏見や先入観、歪んだ情報・データ、個人的経験則・記憶、思い込みなどによって、非合理的になる心理現象。社会学(社会心理学)や経済学(経済行動学)、論理学、認知科学など幅広いジャンルで研究されている。
本書では、数ある「認知バイアス」から、「確証バイアス」「正常性バイアス」「同調性バイアス」「希少性バイアス」をはじめ「ハロー効果」「ダニング=クルーガー効果」「プロスペクト理論」「スリーパー効果」など、読者の関心や興味が強いと考えられるもの、身近で陥りやすい危険の高いもの、知っていると生活にも役立つものを中心に厳選して、図解でわかりやすく伝える。
フェイクニュースや詐欺的行為や犯罪が蔓延し、AI技術の向上などによって、「何が正しいか」わかりにくくなった現代の世の中で、賢く生きていくためには必須の知識!
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