恋はバイアスだ!感情がゆがめる現実のフィルター【眠れなくなるほど面白い 図解 認知バイアス】

「あばたもえくぼ」と認知バイアスの関係
【感情移入ギャップ】

強い感情は人を盲目にしてしまう

シェイクスピアの戯曲『ヴェニスの商人』の有名なセリフが由来とされることわざといえば「恋は盲目」です。人は恋に落ちると理性や常識を失い、寝ても覚めても頭の中は好きな人のことでいっぱいになってしまう、といった心理的な盲目状態を表わすたとえとしてよく使われています。

「本当にそんなことあるの?」と思った方は、自身の青春時代の記憶を掘り起こしてみてください。きっと一度や二度は恋愛に夢中になっていた時期があったはずです。

このように特定の対象に何らかの強い感情を持つことで、冷静な判断力を失い、客観的な立場で自分自身や物事を見ることができなくなってしまう心理状態を「感情移入ギャップ」と呼んでいます

下図はそれをで示したもので、感情が冷めている(COLD)ときはわずかな欠点や気に入らない部分に目が行きがちですが、感情が高まる(HOT)と対象のすべてが魅力的に見え、以前は欠点だと思っていた部分もチャームポイントの1つに思えてしまうのです。まさか自分の感情にそれほどのバイアスがかかるとは、COLDの状態では想像もできないですよね。

この感情移入バイアスは、他者の感情に対しても同様に働きます。同じ感情を持つ人には共感しやすく、逆の立場の感情を想像し、理解するのは簡単ではないのです

感情移入で対象の見え方、捉え方は大きく変化する

「COLD」なときは「HOT」な感情を、「HOT」なときは「COLD」な感情を想像しにくい

こうした状態を『感情移入ギャップ』、あるいは『Cold-Hot Empty Gap』 という

知らないことには共感しづらい

参考文献

  • Loran Nordgren, Mary-Hunter McDonnell and George Loewenstein. “What Constitutes Torture? Psychological Impediments to an Objective Evaluation of Enhanced Interrogation Tactics,” Psychological Science: 22, 689-694, 2011.
  • Michael Sayette, George Loewenstein, Kasey Griffin and Jessica Black, “Exploring the Cold-to-Hot Empathy Gap in Smokers,” Association for Psychological Science, 19, 926-932, 2008.
  • Timothy Wilson and Daniel Gilbert, “Affective Forecasting,”Advances in Experimental Social Psychology: 35, 345-411, Academic Press, 2003.
  • 安西祐一郎/今井むつみ他(編)『岩波講座コミュニケーションの認知科学2:共感』岩波書店、2014年。
  • 越智啓太『恋愛の科学』実務教育出版、2015年。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 認知バイアス』監修:高橋 昌一郎

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 認知バイアス』
監修:高橋 昌一郎

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「認知バイアス」は物事の判断が、偏見や先入観、歪んだ情報・データ、個人的経験則・記憶、思い込みなどによって、非合理的になる心理現象。社会学(社会心理学)や経済学(経済行動学)、論理学、認知科学など幅広いジャンルで研究されている。

本書では、数ある「認知バイアス」から、「確証バイアス」「正常性バイアス」「同調性バイアス」「希少性バイアス」をはじめ「ハロー効果」「ダニング=クルーガー効果」「プロスペクト理論」「スリーパー効果」など、読者の関心や興味が強いと考えられるもの、身近で陥りやすい危険の高いもの、知っていると生活にも役立つものを中心に厳選して、図解でわかりやすく伝える。

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