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調理に時間がかかる煮物や蒸し物を、短時間で料理可能にする圧力鍋のしくみとは?【物理の話】

Text:長澤光晴

圧力を利用

圧力鍋には、煮物や蒸し物のように調理に時間がかかる料理を、普通の鍋よりも短時間で済ませられる、という特徴があります。

この鍋のしくみを説明する前に、まず、水が沸騰(ふっとう)する温度「沸点(ふってん)」について考えましょう。

水を熱したとき、ある温度に達すると気体(水蒸気)になろうとして沸騰を始めます。この温度を沸点と呼びます。沸騰している水をいくらあたためても、それ以上の温度にはなりません。その理由は、与えられた熱が、水から水蒸気になるために必要な蒸発熱としてすべて使われてしまうことにあります。

次に、圧力と水の沸点の関係を考えましょう。

水の沸点は100℃である、とよく言われますが、これは標高0メートルの1気圧(約100kPa:キロパスカル)での話です。一般に、標高の高い場所ほど気圧は低下し、そのため水の沸点は100℃よりも低くなります。たとえば、富士山の頂上の気圧は約0.6気圧なので、水は約87℃で沸騰します。よく、高い山に登ったときに炊いたお米はおいしくない、といいます。これは、普段と同じようにお米を炊くと、お米にきちんと火が通る前に水が蒸発してなくなり、芯が残った状態で炊き上がることになってしまうからです。

これとは逆に、圧力が高いと水が沸騰する温度は上昇します。たとえば、1.6気圧での水の沸点は約113℃です。

この状態を人工的につくり出すのが、圧力鍋です。

水が蒸発して水蒸気になるとき、その体積は約1000倍に膨れようとします。これを鍋の中に閉じ込めれば、圧力が高くなります。普通の100℃よりも高い温度で調理することで、短時間で食材に火を通すことができるわけです。

では、どのように圧力を調節するのでしょうか?調節には、蒸気の逃がし口に取り付けられた、おもりやスプリングが付いた弁を使います。圧力が設定値より低いと弁は閉じていますが、設定値より高くなると蒸気が弁を持ち上げて、適度に蒸気を外へ逃がすことで圧力を下げるしくみです。これを繰り返すことで圧力を調節します。また、おもりの重さや、スプリングの強さを切り替えることで、料理に合わせた圧力にすることもできます。万が一、この弁が動作しない場合に備えて、安全弁が付いています。

圧力鍋は水がないと圧力がかかりません。そのため、煮込みなどの水分の多い料理に向いています。水分が少ない料理には使えないので注意しましょう。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 物理の話』
著者:長澤光晴  日本文芸社刊

執筆者プロフィール
1967年生まれ。東京理科大学理工学部物理学科卒業。北海道大学大学院理学研究科物理学専攻博士課程修了。東京電機大学工学部基礎教育センター・工学部環境化学科准教授、フランス国立極低温研究所(CRTBT)客員研究員(2001年)を経て、現在は東京電機大学工学部自然科学系列・工学研究科物質工学専攻教授。博士(理学)。日本物理学会所属。著書に『面白いほどよくわかる物理』(日本文芸社)がある。


水洗トイレ・冷蔵庫からジェトコースター、スケート、虹、オーロラ、飛行機、人工衛星・GPSまで身の回りにある物や現象のしくみが面白いほどよくわかる!文系の人でも理解できるよう、とにかくわかりやすく、またとにかく図を使ってうまく説明しました! 本書で扱ったテーマは、身の回りにそれとなくある物や現象です。それらの仕組みを知らなくても生きてはいけますが、知っていればなかなか楽しく暮らしていける、そんなものばかりです。物理の醍醐味は、いろいろな現象を少数の法則や定理そして少しの仮定で取り扱うことができるところにあると思います。

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