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夜道でドキッ!懐中電灯や車のヘッドライトに照らされると猫の目が光るワケとは?【物理の話】

Text:長澤光晴

猫の目と再帰性反射

夜、懐中電灯や車のヘッドライトに照らし出された猫の目がキラリと光ることがあります。人間の目は光りませんが、なぜでしょう?

この疑問に答えるために、地上の動物の目がどのように光を捉え、物体の形や色などの情報を脳に伝えているのかを見ていきましょう。

物体からの光は角膜で大きく屈折された後、水晶体で屈折が微調整されて、眼底付近の光を感知する組織(網膜)に達します。

物体をよく見ようとして、眼球の向きや毛様筋で水晶体の厚さを変化させるのは、網膜の中で光を捉える細胞が集中している黄斑(こうはん)に光を誘導するためです。黄斑が捉えた物体の情報は、視神経を通して脳へ伝えられます。

水晶体の外側には、目に入ってくる光の量を調整するために、カメラの絞りに相当する虹彩(こうさい)と呼ばれる部分があります。虹彩は真ん中に孔が開いていて、光量が多い場合は網膜を痛めないように孔を小さくし、光量が少なければ少しでも目の中へ光を導き入れるために孔を大きくします。

この孔が瞳孔(どうこう)です。

猫のように、本来夜行性の動物では光による瞳孔の変化は顕著です。

猫の目は昼間、縦に細く伸びていますが、夜になると瞳孔が大きく開いています。夜は太陽からの反射光がないために、瞳孔を大きく開いて少しでも多くの光を目に取り込もうとするのです。

人間も猫も、目のおおまかな構造は一緒です。決定的に違うのは、猫の目には輝板「きばん(タペタム)」と呼ばれる組織層が網膜の外側にあることです。

輝板は、網膜を一度通っただけでは捉えきれなかった光を反射させ、再び網膜に光を当てるためにあります。このように光を再利用することによって、猫は暗闇でも獲物の姿を鮮明に感知できるのです。

それでも網膜で捉えられなかった光は、水晶体を通って、元来た道筋と平行に光源の方へ戻っていきます。そのため、猫の目がキラリと光って見えるのです。

この現象は、再帰性反射と呼ばれます。

再帰性反射は、交通標識や危険防止のための反射板など、安全に関わるものへ積極的に利用されています。これらには、猫の目と同じように透明な球体と反射材を組み合わせたタイプや、三角形のモザイク模様が特徴的なコーナーキューブタイプがよく使われています。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 物理の話』
著者:長澤光晴  日本文芸社刊

執筆者プロフィール
1967年生まれ。東京理科大学理工学部物理学科卒業。北海道大学大学院理学研究科物理学専攻博士課程修了。東京電機大学工学部基礎教育センター・工学部環境化学科准教授、フランス国立極低温研究所(CRTBT)客員研究員(2001年)を経て、現在は東京電機大学工学部自然科学系列・工学研究科物質工学専攻教授。博士(理学)。日本物理学会所属。著書に『面白いほどよくわかる物理』(日本文芸社)がある。


水洗トイレ・冷蔵庫からジェトコースター、スケート、虹、オーロラ、飛行機、人工衛星・GPSまで身の回りにある物や現象のしくみが面白いほどよくわかる!文系の人でも理解できるよう、とにかくわかりやすく、またとにかく図を使ってうまく説明しました! 本書で扱ったテーマは、身の回りにそれとなくある物や現象です。それらの仕組みを知らなくても生きてはいけますが、知っていればなかなか楽しく暮らしていける、そんなものばかりです。物理の醍醐味は、いろいろな現象を少数の法則や定理そして少しの仮定で取り扱うことができるところにあると思います。

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