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「物質すべては空」とはどういうことか【般若心経】

Text:宮坂宥洪

色不異空(しきふいくう)

般若心経で、観自在菩薩は3回、「舎利子よ」と呼びかけています。漢訳では最後の呼びかけを省いていますが、原典では3回です。ということは、伝授の内容は大きく三つにわかれていると考えてよいでしょう。

ここから始まる最初のパートは、観自在菩薩が見極めた「五蘊皆空」についての説明です。五蘊とは、先にあげたとおり、「色」「受」「想」「行」「識」の五つです。それらがすべて「空」であることを、表現をかえながら説明しているのです。

煙に巻く表現は本当の意味を示していない

先に、観自在菩薩は、「我が身は五蘊なり」と見極め、次いで「それらは空である」と見極めたと述べました。ここでいう「色」は、「我が身」の構成要素としては「(物質的な)体」を指しますが、広く物質界全体を指す言葉でもあります。

 

私たちが、目にして触れることができるすべてのものを「色」といいます。その物質的なもののすべては「空と別のものではない」、つまり「色=物質すべて=空」だといっているわけです。

「空」といえば、ふつうは「ない」ととらえるでしょう。しかし、ここの意味を「物質すべてはない」とすると、わけがわからなくなってしまいます。

「物質はあると思えばある。ないと思えばないのである」などと、煙に巻くかのような般若心経の解説書もありますが、実際の意味は違います。

これを理解するキーワードが、下記↓意味のところにある「空性(くうしょう)」です

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 般若心経』
著:宮坂宥洪 日本文芸社刊

執筆者プロフィール
真言宗の僧、仏教学者。1950年、長野県岡谷市生まれ。高野山大学仏教学科卒。名古屋大学大学院在学中、文部省国際交流制度でインド・プネー大学に留学し、哲学博士の学位取得。岡谷市の真言宗智山派照光寺住職。

今、人気の空海(真言宗)をはじめ、最澄の天台宗、臨済宗、曹洞宗で読まれている「般若心経」。写経を中心に長く人気を博している般若心経だが、まだまだ「難しい」「よくわからない」といったイメージを持たれることも多い。今回は、現代語訳をしっかりと解説しつつも、私たちの実生活と結びつけながら、その思想や意図するところをわかりやすく解き明かしていく。