主に2種類のブレーキがある
技術の進歩によって電車の走行速度が上がっているなか、電車を止めるためにかかる時間を短縮するという役割を担っているのがブレーキです。ブレーキには多くの種類がありますが、代表的なのが摩擦ブレーキと電気ブレーキ。これはどちらかを搭載するというものではなく、両者を併用して場面に応じて使い分けています。摩擦ブレーキは、回転する車輪にストッパーのようなものを押し当てて、ブレーキをかけるという単純なしくみです。一方、電気ブレーキは、モーターを前に回す力と逆方向jに力を加えることによって、車両を止めています。
また同時に、電池を使わないタイプの自転車のライトのように、車両に減速させる力を利用して発電しています。厳密には少し違いますが、おおよそこういったしくみです。発電ブレーキはその電力を使わずに捨ててしまいますが、回生ブレーキはその電力を、後ろを走る電車の動力として使うことができます。そうなると、発電ブレーキより回生ブレーキの方が優秀と思うでしょう。しかし、周りにほかの電車が走っていない場合は電力を逃すことができず、ブレーキが利かなくなってしまうのです。そのため、回生ブレーキは摩擦ブレーキなどほかのものと併用する必要があります。
摩擦の力で車体を止める「摩擦ブレーキ」
踏面ブレーキ
車輪の側面に、制輪子を押しつけ車両を止めます。図のように制輪子が2つある「両抱き式」のほかに、制輪子が一つの「片押し式」があります。
ディスクブレーキ
車軸につけられたブレーキディスクと呼ばれる円盤に、ライニングを押しつけることで車両を止めるブレーキです。
レールブレーキ
台車につけられたブレーキシューを、空気圧や油圧を使って直接レールに押し当てることで車両を止めます。急こう配でも使うことができるため、日本では箱根登山鉄道で採用されています。
電気の力で車両を止める「電気ブレーキ」
①ブレーキ作動時に主電動機(モーター)で発電
②電気を架線に戻す
③後ろを走る電車の動力に利用
④架線から車体へ電気が送られる
主電動機(モーター)は、電気を流すと回転して電車の動力となり、反対に外から力を加えて回転させると発電します。
発電ブレーキ
①ブレーキ作動時に主電動機(モーター)で発電
②発電した電気を熱エネルギーとして放出する
回生ブレーキが開発されるまでに主に使われていたブレーキ。発電した電気は、熱エネルギーとしてそのまま大気中に放出します。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 鉄道の話』綿貫 渉
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 鉄道の話』
綿貫 渉 著
通勤・通学、旅行・おでかけ…私たちは普段何気なく電車や駅を利用していますが、なぜ安全に時間通りに運行できるのか、遅延や事故・トラブルの際はどう対処しているのか、意外と知らないことも多い鉄道の話。本書では、今さら聞けない基本的なしくみから、知るほど面白い鉄道の歴史まで、図解やイラスト付きでわかりやすく解説します。
公開日:2023.07.27