そもそも「不安障害」って何?
私たちが普段感じている「不安」と「不安障害」との違いはどこにあるのか、それがどのようなケースであらわれるのかを見ていきましょう。
不安障害は「警報装置」が故障した状態
専門家の多くは、不安や恐怖を「警報装置」に例えることがあります。火災の発生を知らせる警報装置のサイレンが鳴ったら、私たちはどうするでしょうか? まずは火事の場所を探し、状況によっては、水や消火器で火を消す、手に負えないようなら逃げるといったところでしょう。実は火事ではなかったということもよくあることです。そのときは手動でサイレンを止めます。これが正常な警報装置の状態です。
この警報装置は、煙や熱を感知して火災の発生を判断するのですが、故障している場合、タバコや線香、調理中の少ない煙、ストーブの熱程度で反応するようになってしまいます。しかもサイレンは必要以上に大きな音で鳴り、自分では止めることが難しく、それが何度も繰り返されます。
不安障害を抱えている人は、このような「故障した警報装置」に悩まされているのと同じ状態だといえます。
とはいえ、常に火災の危険はあるので、装置自体をなくしてしまうことはできません。必要なのは、サイレンの音量を適度にする、手動で止められるようにする、敏感すぎるセンサーを調整するといった部分的な「修理」です。
症状があらわれる3つのパターン
「不安障害」はひとつの病名でなく、さまざまな症状のある病気をグループとしてさしたものです。「障害」という言葉が、重篤で治らない疾患などと誤解されやすいことから、最近では「不安症」という呼称も推奨されています。
症状としては、何らかの不安や恐怖によって、息切れ、めまい、発汗、心拍数の上昇、震えなどが起きたり、疲労感や睡眠不足を感じたりするようになります。もちろん、これらは血流の変化などで、誰にでも起こることであり、すぐに病気だとはいえません。
しかし、不安と症状が、①ふさわしくない状況で生じる、②頻繁に生じる、③日常生活に支障をきたすほど強く、長く続く――以上の3点に当てはまる場合は、「不安障害」と考えられます。国際的な診断基準としては、アメリカ精神医学会による「精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM)」があり、現在はその第5版(DSM-5)が発行されています。
発症の原因は十分には解明されていませんが、個々人の性格や体質といった「気質的な要因」と、家庭環境やライフイベント(転職、事故や災害の体験、近親の死)などの「環境的な要因」の両方が関与していると考えられます。治療としては、薬物療法、精神療法、またはその併用などがあり、多くの患者に効果が見られています。
CHECK!
- 不安障害は不安により、息切れ、めまい、発汗などが起こる
- 発症の原因は「気質的な要因」と「環境的な要因」がある
【出典】『心の不調がみるみるよくなる本』ゆうきゆう:監修
【書誌情報】
『心の不調がみるみるよくなる本』
ゆうきゆう:監修
現代増加の一途をたどる「不安障害」。
不安障害とは払拭できないほどの不安や恐怖の感情が過剰に付きまとい、日常生活に支障をきたすような状態になることです。
一概に不安障害といってもさまざまな症状があり、突然理由もなく激しい不安に襲われて発作などを引き起こす「パニック障害」や、謎の強迫観念にとらわれて意味のない行為を繰り返す「強迫性障害」、若者に多く人前にでると異常に緊張して体調を崩す「社交不安障害」などタイプは異なります。
本書ではそのような不安から引き起こされる心の不調について、症状例をそえて専門医がわかりやすく解説。自分の「不安障害度」を簡単にチェックできる診断テストも掲載。病気を自覚し、その症状にあわせた治療を受けられるようサポートする一冊です。
公開日:2024.12.02