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松井稼頭央「休養」。解任と辞任の違い【二宮清純 スポーツの嵐】

Text:二宮清純

2014年にも伊原監督が休養

 セ・パ交流戦がスタートする2日前の5月26日、西武球団は成績不振を理由に松井稼頭央監督の「休養」と、渡辺久信ゼネラルマネジャーの代行監督就任を発表した。

 26日時点での埼玉西武の戦績は15勝30敗で、首位・福岡ソフトバンクから15.5ゲーム差の最下位。球団としては、交流戦前にけじめを付けたかったのだろう。

 松井の監督就任1年目(23年)の順位は5位。今季も春先から大きな借金を抱え込み、この時点での監督交代はやむをえまい。

 本人も「自分が結果を出せなかったので、受け入れている」と淡々としていた。

 それにしても「休養」という表現は微妙だ。日本のプロ野球独自の表現といってもいいだろう。

 西武においては2014年、第2次政権初年度の伊原春樹監督が低迷の責任を問われて6月4日に「無期限休養」となり、6日から田辺徳雄打撃コーチが代行の任に就いた。

 松井もこのケースに近く事実上は「無期限休養」、すなわち「解任」である。

 しかし、球団はあまり「解任」という表現を用いたがらない。なぜか?

「解任というのは、いわば会社都合。仮に契約がまだ1年残っている場合は、その分も含めて会社に支払い義務が生じる。しかし“休養”とすると、そこが曖昧になり、“残り1年分の年俸については話し合いましょう”という方向に持っていくことができる。

 監督の中にも“解任じゃイメージが悪いから休養の方がいい”という者がいる。一度、監督失格の烙印を押されると、次の仕事探しに支障が出る。

 確かに“休養”という言葉は曖昧で、よく分からない。しかし監督ひとりを“解任”したら、じゃあフロントに責任はないのか、となりかねない。まぁ、責任を明確にしたがらない日本球界独自の表現と言えば言えるかもしれないですね」(元球団代表)

 もう随分昔のことだ。優勝経験のある老将が、成績不振を理由に、シーズン途中にでもユニホームを脱ぐ可能性が出てきた、といくつかのスポーツ紙が報じた。

 そんなある日、某紙の一面に「辞任」の見出しが躍った。老将の怒るまいことか。

「オレは自分から辞める、とは一言も言ってないぞ。書くなら“解任”にしろ!」

 辞任の場合、自己都合だから、辞めた後の給料はビタ一文支払われない。そこを気にしていたのだ。

 解任、辞任、休養、あるいは更迭。どの言葉も似て非なる。その中で、どの言葉を選択するか。そこに球団の意図が透けて見える。

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