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男性の罹患率第1位の肺がんの原因となるのは!?【病理学の話】

Text:志賀貢

喫煙と受動喫煙が大きな要因

日本でのがんによる死亡者数はほかの病気や原因を上回り第1位で、2017年の死亡数は約37万人(国立がんセンター統計)にのぼるといいます。その中でも、特に、肺がんの罹患率は男性で1位、女性で3位になっています。

母親は乳がんを患わずらい卵巣がんで死亡、祖母は卵巣がん、叔母は乳がんで亡くなっています。これは「遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)」が考えられ、遺伝的にがんが罹患しやすくなります。

肺がんは、肺の細胞の中にある遺伝子に傷がつき、変異することで生じます。傷をつける原因にはいろいろあって、代表的なものでは「喫煙と受動喫煙」、アルミニウム、ヒ素、アスベストなどが知られています。

受動喫煙とは、喫煙者が吸っているタバコの煙を周囲の人が吸うことで、特に副流煙(火をつけたまま放置されているタバコの煙)に有害物質が多く含まれます。生まれつき遺伝子に傷があってがんになる人はごく稀です。

肺がんは、早期ではほぼ無症状ですが、進行するにつれ、咳、痰たん、血痰、発熱、呼吸困難、胸痛などの呼吸器に症状が現れます。ただ、これらの症状は肺がん特有のものではないため、他の呼吸器疾患と区別がつきにくいところがあります。

タバコを吸う人と、吸わない人を比べてがんになる確率は男性でおよそ4〜5倍、女性では3倍近くになります。タバコを吸わない受動喫煙者も含めるともっと多くなるはずです。

これは肺がんだけではなく、喫煙がさまざまながんの原因となることを示しています。

肺がんを組織型で分類すると、「小細胞がん」と「非小細胞がん」の2つに分けられます。非小細胞がんが肺がん全体の約85%を占め、さらに「腺がん」「扁へん平上皮がん」「大細胞がん」に分けられ、最も多いのは腺がんです。

肺がんが発症する部位で大きく分けると、「肺門部」と「肺野部」になります。肺門部は肺の入り口の太い気管支のことで、扁平上皮がんが多く、肺野部と呼ばれる気管支の抹梢から肺胞のある肺の奥の部分には、腺がんという種類のがんが大部分です。

がんは環境要因や遺伝的要因に対する認識も大事ですが、一生の間にがんになるリスクは男性で62%、女性で47%ですから、およそ2人にひとりはがんになる可能性があります。

肺野部の腺がんは女性に多い肺がんで、症状が出にくく、肺門部の扁平上皮がんと小細胞がんは喫煙との関連が大きく、小細胞がんは転移しやすいといわれています。また、肺野部の大細胞がんは増殖が速い傾向があります。

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 病理学の話』
著:志賀 貢

シリーズ累計発行部数150万部突破の人気シリーズより、「病理学」について切りこんだした一冊。病理学とは「病(気の)理(ことわり)」の字のごとく、「人間の病気のしくみ」です。コロナウイルスが蔓延する中で、人はどのようにして病気になるのかが、改めて注目されています。細胞や血液、代謝や炎症、腫瘍、がん、遺伝子などと、人体のしくみ・器官、食事を含む生活、加齢などさまさまな環境との関連から、「病気」を解明するもの。専門書が多いなか、病気とその原因をわかりやすく図解した、身近な知識となる1冊です。