家庭と教育現場の両面から支援
限局性学習症の子どもと接するうえで大事なのは、周囲の大人たちの「やればできる」という安易な認識を改めることです。苦手な勉強法を繰り返しても学習効果は得られません。かえって自信を失い、不登校や抑うつなどの二次障害を招く恐れもあります。
だからこそ、子どもがどのような困難を抱えているかを明確にしたうえで、その特性に合った支援・工夫を考え、前向きに学習できる環境を整えていくことが大切です。たとえば読字障害ならば、文字の形を認識しやすいUD(ユニバーサルデザイン)フォントの教材を用いる、「はなが/きれいに/さいた」といった具合にまとまりごとにスラッシュやスペースを設ける、などの支援で読みやすくなることがあります。また算数障害ならば、2桁以上の計算で混乱しないように桁ごとに数字の色を分ける、複雑な計算が増える高学年からは電卓を使用するなどの方法もあります。
こうした支援を行う際、家庭だけでなく教育場の理解も必要です。このため、限局性学習症の子どもは、通常学級で学ぶこともできますが、特別支援学級で学ぶこともできます。ほかにも、通常学級に在籍しながら、週に数時間だけ個別や小集団で授業を行う通級指導教室のサポートを受けるという方法もあります。いずれの場合においても、教師や教育支援員に対する研修、親への心理教育を行い、学習しやすい環境を整えていきます。
一方、子どもに対しては、できることや得意なことを活かして苦手を補っていく長所活用型の指導を行います。限局性学習症の子どもは学習における成功体験が少ないので、手の届くことから少しずつ進めるスモールステップで学習を積み重ねるなど、褒めながら伸ばすことによって学習の意欲を高めます。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 臨床心理学』監修/湯汲英史
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 臨床心理学』
監修:湯汲英史
ADHDや学習障害、統合失調症やパニック障害などの言葉を耳にする機会はありますが、なんとなく心やメンタルの不調・病気と捉えてしまいがちな臨床心理学の分野。しかし紐解いていくと実はそれぞれの症状には特性や原因があり、子どもが抱えやすいのものから大人が抱えやすいものまで様々です。また、ストレスが原因で自分では気づかないうちに発症してしまうものも。本書ではそんな一見理解し難い「心の問題」の特性や症状を図解でわかりやすく解説します。最も大切なことはしっかりと特性を理解して自分と、そして他人と向き合うことです。「自分は他人がふつうにできることができない」「職場のあの人はどうも変に感じる」「子どもがじっとしていてくれない」こうした日常のもやっとした感情も、臨床心理学を知ることで理解が深まります。また、実際に現場で心の病気を抱えた人と向き合う公認心理士師の仕事についても紹介します。臨床心理学を通して「心の問題」について知ることで、自分や他人の特性がわかり、周囲と上手に付き合っていく方法を知ることができる一冊です。
公開日:2023.05.25