老化をすると歯にも支障が出てくる
「よく噛んでよく食べる」誰もがこうありたいと思います。歯周病とは歯肉炎や歯を失う歯槽膿漏(歯周炎)のことですが、老化にともない“歯槽膿漏症”がひどくなったら、歯を抜いて入れ歯をするのが古くからの処置法でした。“歯周病”は細菌が歯の周り(歯周ポケット)で定着して炎症が起こる感染症です(下図)。最終的には歯茎や骨の炎症により、顎の骨が溶けることで歯が抜け落ちてゆく疾患です。この細菌の塊である“バイオフィルム”は、歯茎の周りに強固に付着することが問題となっています。
個人差もありますが、口中には600種類以上もの細菌が存在しており、この細菌が糊状のバリアを出して、バイオフィルムとなります。歯の表面や歯周ポケットについたバイオフィルムは、ここから細菌が毒素を吐き出して歯周病を進行させるのです。では、老化と歯周病には関係があるのでしょうか?原因はいくつかありますが、老化によっては歯が十分に磨けなくなることがあり、バイオフィルムの除去が十分にできなくなる。それがもっとも大きい理由となっています。
そのうえ口内の乾燥は加齢で進み、バイオフィルムがさらに強くなる。加えて、免疫機能の低下や生活習慣病の乱れがあると、感染症である歯周病は進展しやすくなると考えられるのです。現在、80歳で20本の歯を守ろうとする「8020運動」が国民に浸透し、歯周病から歯を守ろうとする流れがあります(下図)。現在は国民に毎年の歯科検診を義務付ける「国民皆歯科検診」制度の検討を明記しています。
これは、糖尿病や心筋梗塞、動脈硬化などの全身性疾患とのかかわりが示されている歯周病を悪化前に見つけ、治療しようという方針なのです。誰のためでもありません。ご自身が一生涯、「よく噛んでよく食べる」ために、食後の歯磨きの徹底、歯科医師による口内清掃の習慣化、全身の体調管理をするなど、生活習慣の乱れをなくして歯周病から歯を守らねばなりませんね。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 老化の話』監/長岡功 野村義宏
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 老化の話』
長岡 功 総監修/ 野村 義宏 監修
高齢化や平均寿命が伸びた社会では、「老化」は誰もが避けられない、しかし誰もが可能な限り抗いたいテーマ。その多くは人体の「老化現象」、またそれに伴う「諸症状」として、完全には克服できないまでも、原因やしくみを知ってうまく対応すれば、症状を「やわらげる」ことや、日常生活での「影響を少なくする」こと、また「目立たなくする」ことが可能である。本書では具体的に、老化にともなう病気・諸症状の原因に言及し、その対処・対策法を解説、紹介する。中高年以降の健康と美容の悩みを楽しく読めて、一気に解決する一冊です。
公開日:2023.03.12