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老化すると匂いの感じ方が変わる?嗅覚の低下を予防できる方法とは【図解 老化の話】

Text:長岡功 野村義宏

嗅覚の低下も老化が原因だった

高齢になると、匂いの感じ方も徐々に低下していきます。耳や目といった感覚器と同じですね。匂いの感じ方が低下する場合、蓄膿症やウイルス感染(COVID19など)によることが多いのですが、加齢も嗅覚を低下させる要因の1つになります。鼻の奥には嗅上皮といわれる場所があります。嗅上皮には数百万の嗅細胞が密集し、匂いの情報を脳に伝える役割を果たしています。ですから、なぜ加齢で嗅覚が落ちるのかを理解するには、脳内での神経再生について少し知る必要があるのです。

一般的に、神経細胞は、一度傷害されると二度と再生しません。ところが、嗅細胞だけは、例外的に終生にわたり再生を繰り返します。古い細胞が死んで脱落しても、代わりに新しい嗅細胞が生まれて嗅上皮に入り込み、嗅細胞数は維持されるのです。学校に例えると、毎年3月に多くの卒業生が学校を離れますが、4月になると新入生が仲間に加わります。全校生徒数に変わりはありませんが、一部の生徒が毎年入れ替わる(嗅細胞では月々の単位で入れ替わる)イメージです。

とはいっても、加齢した嗅上皮では、死んで脱落していく細胞は減るものの、新しく生まれ変わる細胞の減り方のほうが多いのです。結果として嗅上皮内の嗅細胞数は減少し、匂いの感じ方が低下してしまう。要するに、老化によって嗅細胞の新生能力が低くなるというわけです(下図)。また、嗅覚の低下は、男性60代、女性70代ぐらいから見られるようです。

では、どのようにしたら嗅細胞の減少を抑えることができるのか。これはたいへんむずかしい問題ですが、匂いを嗅ぐようにすると神経の再生が促進されることが動物実験によってわかってきたことは朗報です。健康維持のために定期的な運動が推奨されますが、嗅覚でも、さまざまな匂いを意識して嗅ぐようにすれば、加齢による匂いの低下を予防できるかもしれません。歳を取って匂いに鈍感になったら、いろいろな匂いを求めて歩く・・・・・・「匂い散歩」をするのも楽しく有効で、一石二鳥かもしれません。

出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 老化の話』監/長岡功 野村義宏

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 老化の話』
長岡 功 総監修/ 野村 義宏 監修

高齢化や平均寿命が伸びた社会では、「老化」は誰もが避けられない、しかし誰もが可能な限り抗いたいテーマ。その多くは人体の「老化現象」、またそれに伴う「諸症状」として、完全には克服できないまでも、原因やしくみを知ってうまく対応すれば、症状を「やわらげる」ことや、日常生活での「影響を少なくする」こと、また「目立たなくする」ことが可能である。本書では具体的に、老化にともなう病気・諸症状の原因に言及し、その対処・対策法を解説、紹介する。中高年以降の健康と美容の悩みを楽しく読めて、一気に解決する一冊です。