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物理学の観点から見る自動車の面白い仕組みとは?【すごい物理の話】

Text:望月修

タイヤのアッカーマン機構とは

1本の軸につながった2つのタイヤを転がしてみましょう。2つのタイヤの直径が同じならまっすぐ進みます。今度は左のタイヤの直径を右のものに比べてちょっと小さくします。タイヤは左に曲がっていきますね。この原理を使ったのが電車の車輪です。車輪にテーパーを付けて、曲がるときにレールに乗った車輪の直径が、遠心力によって左右で異なるように工夫されています。

これに対して、自動車は平らな路面を走るので、テーパーは使えません。そこでステアリングを切るときに「アッカーマン式リンク機構」を使います。このリンク機構は、左右の前輪タイヤの傾き角度を変え、旋回中心からの円錐形の頂角が異なるように工夫されています。また、後輪側では左右のタイヤが独立して回転するため、旋回半径の違いによって回転数を変えられるようになっています。この後輪に似た構造を持つのがリヤカーです。リヤカーの車輪は、軸でつなげずに左右独立させているため、簡単に旋回することができます。

左右独立の車輪ではなく、軸につなげた車輪を使っているのが、お祭りなどの花形「山車」です。有名な「岸和田のだんじり」などは車軸で両輪がつながっているため、進路を変えるときには棒を差し込み、「てこの原理」で山車を浮かせて曲がります。

京都の「祇園祭」の「山鉾」の回転の仕方は、細く切った竹を車輪の前に敷き、摩擦を減少させて方向を変えます。これを「辻回し」というようです。きっと、みんなで力を合わせて成し遂げることで一体感を生むためでしょう。

物理学の観点から見る自動車の面白い仕組みとは?【眠れなくなるほど面白い 図解 すごい物理の話】

出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 すごい物理の話』著/望月修

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 すごい物理の話』
著:望月修

物理学は、物質の本質と物の理(ことわり)を追究する学問です。文明発展の根底には物理学の考えが息づいています。私たちの生活の周辺を見渡しただけでも、明かりが部屋を照らし、移動するために電車のモーターが稼働し、スマートフォンの基板には半導体が使われ、私たちが過ごす家やビルも台風や地震にも倒れないように設計されています。これらすべてのことが物理学によって見出された法則に従って成り立ち、物理学は工学をはじめ、生命科学、生物学、情報科学といった、さまざまな分野と連携しています。……料理、キッチン、トイレ、通勤電車、自動車、飛行機、ロケット、スポーツ、建築物、地震、火山噴火、温暖化、自然、宇宙まで、生活に活かされているもの、また人類と科学技術の進歩に直結するような「物理」を取り上げて、わかりやすく図解で紹介。興味深い、役立つ物理の話が満載の一冊。あらゆる物事の原理やしくみが基本から応用(実用)まで理解できます!

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