人は誰でもアイヒマンになりうる
人は権威によって命令されると、たとえ正しくないとわかっていても、その命令を実行してしまうことがあります。
これを明らかにしたのが、ミルグラムによる服従実験、別名アイヒマン実験です。アイヒマンとは、ナチス政権下において、ユダヤ人の強制収容所移送の指揮的立場にあった人物の名で、この実験は「特定の条件下であれば、人は誰でもアイヒマンような残虐な行為を犯すのか」を検証するために行われました。
実験では、まず「学習における懲ちょう罰ば つの効果に関する研究」という名目のもと参加者が集められます。参加者はそれぞれ教師役1名、生徒役1名のペアにわかれ、別々の部屋に通されます。
部屋にはマイクとスピーカーがあり、お互いの姿は見えませんが声は聞こえる状態です。
次に教師役は生徒役が出題された問題を間違うたびに、電気ショックを与えるよう研究者から命令されます。その電流は軽微な15ボルトから、命の危険性もある450ボルトまで30段階設定されており、生徒役が間違う度に、研究者はより高い電流を流すよう教師役に命令します。
電圧が上がるごとに生徒役の悲鳴は大きくなり、300ボルトを超えると「もうやめてくれ!」と懇願するようになります。しかし、研究者はあくまで続行するよう命令し、教師役が拒否するまで実験は続きます。
その結果、教師役40人中26人が命じられるまま最大の450ボルトまで電流を流し続けました。教師役は命令を拒否してもなにか罰があるわけではありません。にも関わらず、半数以上の人が命令に従い続けたのです。
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多数派の意見に同調してしまうのはどうして?
日本人はよく多数派に同調しやすい、そんなイメージがあるかもしれません。しかし、この傾向はどんな人にも当て余る普遍性を持ったものなのです。なぜ私たちは多数派の意見に同調しやすいのでしょうか?この同調について、有名な実験があります。
この実験はカード①に描かれた線と同じ長さのものを、カード②に描かれた3本の線の中から選ぶというもので、実験には8人の学生が参加しました。回答はひとりずつ順番に行いますが、実は参加者のうち7人は〝サクラ〞で、あらかじめどの線を答えるかを指定されていました。
明らかに間違った答えでも多数派に同調してしまう
この実験の目的は、多数が間違った回答をした場合、被験者はそれに同調するかを調べることで、被験者は7人のサクラの回答を聞いたあと、8番目に回答します。実験は線の長さを変えながら複数回行われましたが、問題自体はいずれもひとりで回答したときは正解率99%というごく簡単なものでした
ところが、7人全員が誤った回答をした条件下だと、被験者による誤答率は32%にも上りました。普通なら間違えようのない問題でも、全員が別の回答を選ぶと、それに大きく影響されてしまうことが明らかとなったわけです。なお、7人のサクラのうち、必ず正解を答える他者がひとりいた場合、被験者の誤答率は5・5%まで低下しました。
会社の会議などでも全員一致の意見に反対するのは勇気がいりますが、ひとりでも反対者がいれば意見を表明しやすくなります。同調を促うながすには全員一致であることが重要で、ひとりでも自分と同じ意見の人がいると、その圧力は大きく弱まるというわけです。
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監修:亀田達也
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公開日:2023.06.06