慢性腎臓病と心血管は相互影響
慢性腎臓病が怖いのは、腎臓の機能が低下することだけではありません。慢性腎臓病になると、心筋梗塞や脳卒中などの心血管病のリスクが大幅に上がるのです。欧米では、腎機能の低下にともなって循環器病による入院や死亡が増加することが、研究により報告されていました。
日本でも、九州大学大学院の久山町研究で、慢性腎臓病と心血管病発症の関係が報告されています。これは福岡県久山町において、40歳以上の住民を対象に40年以上かけて追跡調査を行なったものです。下画像のグラフがその研究結果ですが、男女ともに「慢性腎臓病あり」のグループが「慢性腎臓病なし」のグループよりあきらかに心血管病の発症率が高くなっています。
また、逆に循環器病の患者は腎臓の状態が悪いことが多いという報告もあります。なぜこのような関連が起きるのかというと、さまざまな推測がありますが、腎臓が悪い人は高血圧や動脈硬化を起こすことが多く、それが心血管病につながると考えられています。
一方、心血管病の人は血液の循環が悪く、腎臓への血流が悪くなって腎臓も悪くなりがちです。このように慢性腎臓病と心血管病が相互に関係していることから、近年では「心腎連関症候群」と呼ばれて注目されています。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 腎臓の話』著/上月正博
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 腎臓の話』
著:上月 正博
血液をろ過する、尿をつくる、水分や塩分、ミネラル量などを一定に保つなど、数々の重要な役割のある臓器『腎臓』。普段はあまり意識することはないものの、人間の体の中で非常に大きな役割を果たしています。しかし、加齢をはじめ、生活習慣病などで悪くしてしまうと、人工透析が必要になってしまうなど、健康寿命に直結する臓器でもあります。本書ではそんな腎臓を長く健康に保つために、腎臓の名医による、腎機能を正常に保ち、いつまでも健康でいられるコツを紹介します。『そもそも腎臓の役割って?』という基本的な知識はもちろん、1300万人以上いるといわれる『慢性腎臓病(CKD)』の話、さらに自分や家族に使える『腎機能を高める食事法』、『透析中もできる『腎リハ』』などをイラスト、図解でわかりやすく解説します。人生100年時代を長く健康に生き抜くために誰でも参考になる一冊です。
公開日:2023.02.06