復活を望む死者の守護神アヌビス
山犬の頭を持ち、ミイラづくりを助けることで死者を守る
アヌビスは墓地の神、ミイラづくりの神であり、死者の守り神です。死者の復活が重要であるエジプトにおいて、アヌビス神は大切にされるべき存在でした。
山犬の頭を持つ、または山犬そのものの姿とされるのは、もともと墓地に住みついた山犬が、墓地を守っているように見えたことに由来するといわれます。
アヌビスの出生については諸説ありますが、主要なものは、オシリスと葬祭の女神ネフティスの子であるという説が有力です。
ネフティスはオシリスの妹であり、セトの妻。つまりアヌビスは次男の妻が長男と不倫をして生まれた不義の子であるということです。
セトにバラバラにされたオシリスをつなぎ合わせてミイラにしたことを皮切りに、冥界ではオシリスを助け、大きな役目を果たしています。
死者を明快に導き、オシリスの裁きの間では、死者の魂と法の女神の羽を天秤にかけるのもアヌビスです。
重さが釣り合えば、死者は永遠のときを得イアルの野という楽園で暮らせます。一方、釣り合わない場合は罪人であるということで、幻獣アメミトに魂を食べられて、二度と復活は果たせません。
※アメミト:永遠の不減を意味する幻獣。ワニの頭にライオンの上半身、カバの下半身を持ち、冥界の裁きで罪人の認定を受けた魂を食べる。
死者を守り導く神アヌビス
黒い山犬(ジャッカル)の頭をした神。墓に住みついた山犬が墓を守っているように見えたことが由来という。
ミイラづくりが仕事。死者を冥界に導く、心臓の計量に立ち会うこともある。
死後再生して永遠の生命を得るためのミイラ。ミイラづくりの職人は、ミイラづくりの神アヌビスの仮面をかぶり作業した。
人は5つの要素から構成
古代エジプト人は、人間は「バー」「カー」「イブ(心臓)」「レン(名前)」「シュト(影)」の5つから構成されていると考えた。これらは生きていくうえで欠かせず、さらには、死後の世界でも不可欠とされた。バーは人間の個性や性格を特徴づける精神的な部分で、人の頭を持つ鳥の姿で表される。カーは生命力そのもの、魂といった要素。バーとカーの結合したものが「アク」で、アクとなることで永遠の命を手に入れ、死後も楽園で暮らすことができる。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 世界の神々』監修:鈴木悠介
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 世界の神々』
監修:鈴木悠介 日本文芸社刊
「全知全能のゼウスはどんな神?」「キレやすい海の神ポセイドン」「アフロディーテは魔性の美女」「知的な最高神オーディンとは?」人気コミックやゲームなどでも注目度が高い「世界の神々」。世界の神話に登場する神々の性格とストーリーをわかりやすく紹介します。
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公開日:2025.02.15
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