口腔環境が変化し、さらなる低栄養を招かない為の対策【70歳からおいしく栄養がとれる食事のくふう】
口の中の支障がさらなる低栄養を招きます
食べた物がかめない、というのは筋力の低下とともに、口の中の環境によるところも多いものです。虫歯や歯周病を放置して、歯が欠損してかみにくくなっている、せっかく作った義歯が合わず、歯のすき間に食べ物のカスが入りやすい、そもそも義歯の周辺が痛んでかみにくいということはないでしょうか。
また、「かむ」「飲み込む」に関わるのどなどの筋肉の低下は見られない場合でも、虫歯や歯周病、義歯などを気にして、あまりかまなくてよい食べ物ばかりを選んで食べていると、かむ、飲み込むのに必要な筋力を使う機会が少なくなり、衰えていくということも考えられます。最初は「虫歯を治すまで」「義歯を調整するまで」とやわらかく飲み込みやすい食事をとっていたとしても、歯科に行くのを先延ばしにするうちに、飲み込みやすい食事ばかりになり、栄養が偏っていきます。筋力を維持するためのたんぱく質は、主に肉や魚からとりたいのですが、かみにくいと、どうしてもそうしたものから遠ざかりがちです。本当に筋力が落ちてしまう前に、口の中で起きている問題をできるだけ早く解決しましょう。
また、ぜひやってほしいのが「口のすすぎ」と「うがい」です。口内をきれいにするためでもありますが、口やのどのまわりの筋肉、舌の運動にもなります。水を含んですぐに吐き出すのではなく、時間をかけて、口のまわりの筋肉や舌を思い切り動かしてみてください。声を出してのうがいも効果的です。私たちが実際に関わっているシニアのかたたちでも、これらのことを習慣化しているかたはかむ、飲み込むことが歳を重ねてもうまくできていて、その結果、食事もおいしく食べ続けられています。
【出典】『70歳からおいしく栄養がとれる食事のくふう』
監修:特定非営利活動法人 京都栄養士ネット 日本文芸社刊
監修者プロフィール
訪問栄養食事指導で地域の皆様の健康と栄養をサポートする管理栄養士のグループ。メンバーは京都府栄養士会の会員。2018年9月に認定栄養ケアステーションの認定を受け、京都府全域で訪問栄養指導を中心とした活動を行っている。2021年10月より機能強化型栄養ケアステーションに移行認定。在宅で療養されている方を訪問して、その方にあった食事の作り方やどの程度栄養量が摂れているか何を補えばよいかなどを、その方の嗜好や生活環境を大事にしながら、一人ひとりその人にあった形で提案し、実践してもらえる支援を目指し、多職種と連携し活動している。
70歳を過ぎ、「食が細くなった」「料理も面倒」「元気が出ない」と感じている方は、もしかしたら「低栄養」が原因かも?日々の食事は、健康な体をつくります。シニアになると体の変化に合わせて、必要な栄養もとりかたも変わってきます。この本では、訪問栄養指導の栄養士チームが「手軽」に「おいしく食べて」、「健康寿命をのばす」とっておきの食事のくふうを紹介します。品数が豊富じゃなくても、量が食べられなくても、料理が苦手でも、身近なものから栄養がとるコツがあります。・いつもの食事にちょい足しするだけ!手軽にたんぱく質が補える○○!・30品目用意しなくても、お皿は3つでいい・「食べ順」で栄養の取り逃しを防ぐ・やめられない菓子パンを○○に置き換えてみたら栄養がアップ!・全部手作りじゃなくていい!スーパーやコンビニで手に入るお助け食材ベテラン栄養士が現場で得た知見から生まれた、すぐに使える超実用的な栄養本です。1人暮らしでも、ご夫婦でも、親御さんの食事や栄養状態が気になるかたにも役立つ知識が満載です。3年先、5年先、10年先の健康な身体をつくる「栄養」がとれる食事をはじめましょう!
公開日:2024.05.04