【野球ごはん⑲】≪令和版≫サプリメント・エナジードリンクについて【野球ごはん⑲】≪令和版≫

サプリメントについて

 選手から「体を大きくしたいので、プロテインパウダーをとっていいですか?」と相談を受けることがあります。私はその時、「プロテインは英語ですが、日本語に訳すと何でしょう?」と尋ねます。すると、答えられなかったり、「筋肉を作る粉」と答えたりする選手もいます。正しくは「たんぱく質」です。私は、選手がプロテインパウダーが何かを理解しないまま利用することはよくないと感じます。
 プロテインパウダー、マルチビタミン剤など、一般に「サプリメント」と呼ばれるものは、特定の栄養素を単体または、複数組み合わせて商品化したものです。私はジュニア選手のサプリメント利用は、できる限り控えたいと考えます。ジュニア選手は、連載①≪基本の食事のかたち≫で紹介した食事の形、量をとることができれば、食品から十分に栄養素を補給することができるからです。
 私は選手へサプリメント利用を勧める時は「もうすぐ予選が始まるが、体調不良など食欲がなく食事量を増やせられない時」「夏の高温による食品が傷みやすい環境で補食を携帯できない時」など、食事から必要な栄養素、量をとれない状況に利用するようにと話しています。私はサプリメントを最後の切り札、救急箱のような存在と考えています。例えば、予選前に体調をくずし、食事をとり辛い時にプロテインパウダー、マルチビタミン&ミネラルを利用する。夏の夕方の練習後に補食をとりたいが、おにぎりなどは傷みやすいため、エネルギーゼリーを携帯して補給するという方法です。
 サプリメントは、携帯しやすく、生の食品に比べて傷みにくく便利です。しかし、サプリメントは、パウダー、ゼリー、錠剤の形が多く、噛まずに補給することができます。連載③≪「かむ(噛む)」ことについて≫でご紹介した通り、噛むことと運動能力、食品の消化吸収力には、関係性があります。サプリメントに偏り過ぎると、噛む回数を減らすことになり、選手の運動能力低下、食品の消化吸収力低下につながる可能性もあります。私は以前、選手から「サプリメントの方が効率いい。だから、食事・補食をご飯、肉、野菜よりも、プロテインパウダーなどのサプリメントから多く補給します」と言われたことがあります。その後、夏の予選前にその選手が夏バテを起こし、食欲が低下してプロテインパウダーすら飲み込めなくなってしまい、どうすればいいかと指導者から連絡が入りました。私にとっては、サプリメントは最後の切り札、その切り札が使えない状況でしたので、非常に困りました。その経験から改めて、普段からご飯、肉、魚、野菜、果物など固形物をしっかり噛んで食べる習慣の重要性を実感しました。
 選手がサプリメントを利用する時は、「固形物からとれない状況かどうか」を確認し、検討してください。

エナジードリンクについて

 最近、選手が利用している飲み物として「エナジードリンク」が目立つようになりました。選手からは「練習中、体がよく動く」「目が覚める」など、効果を感じている感想を聞く半面、「エナジードリンクを飲むと、夜ねむれない」「あまり変わらない。気休めで利用しています」と、効果を感じていない感想も聞きます。
 エナジードリンクの多くには、カフェインが含まれています。カフェインを補給すると、眠気が抑えられ、集中力を高められ、疲労感を軽減し、運動能力の維持・向上させる効果があると言われています。研究論文でも多く発表されています。しかし、カフェインの感受性は、強い個人差があり、選手によっては効きが強くなり過ぎます。また、カフェインを取り過ぎると、心拍数の増加(動悸)、めまい、吐き気、不眠などを起こしやすくなります。また、カフェインは、エナジードリンクだけでなく、コーヒー、紅茶、緑茶、コーラ、栄養ドリンクにも含まれています。

 海外では、年代別にカフェインの摂取上限量を設定しています。日本はこの上限量を設定していませんが、学校に掲示している保健ニュースなどのポスターに「清涼飲料によるカフェイン中毒について」など、カフェイン飲料の飲み過ぎに注意を呼びかけるような内容を目にするようになりました。


 このようにカフェイン飲料は、選手によっては合う。・合わないがあります。「今日は大事な試合だから使う」、「今日の練習は最後までやり切りたい」など、使用する日を決めるなどルールを作りましょう。めまい、吐き気などを起こすなど合わない選手は、エナジードリンクの使用を控えましょう。

参考
・厚生労働省「いわゆる「健康食品」のホームページ」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/hokenkinou/index.html

・厚生労働省、日本医師会、(独)国立健康・栄養研究所「健康食品による健康被害の未然防止と拡大防止に向けて」
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/dl/pamph_healthfood.pdf
 
・厚生労働省「食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000170477.html

・消費者庁「食品に含まれるカフェインの過剰摂取について」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/food_safety/food_safety_portal/other/contents_002/
・農林水産省「カフェインの過剰摂取について」
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem/caffeine.html

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