“先生”は好奇心を引き出す楽しい仕事。子どもの「なんで?」はすべての原点!『魔法のおうち実験教室』まえママさんインタビュー【3】


思わず見返したくなる不思議な実験あそびの動画をSNSで発信し、人気を博しているまえママさんの、初の著書『楽しくあそんで理系力が育つ! 魔法のおうち実験教室』(日本文芸社)。この夏の大ヒット実験本となっています。
数年前まで小学校の理科の先生だったまえママさんですが、それ以前は、遠くケニアで中高生に数学を教えていたんだとか。
インタビュー最終回(第3回)では、探究心や好奇心を大切にするまえママさんのルーツを探りました。(前回の記事はこちらから)
取材・文:酒井絢子 撮影:天野憲仁(日本文芸社)
人生初の“先生”を経験したケニアで、教育の影響力を実感
――まえママさんご自身の小さな頃は、理科大好きっ子だったんですか?
まえママ:どちらかというと理数教科の方が好きだったけど、理科が特別好きかというと、実はそうでもなかったかも……。でも、体験とか観察は好きでした。
とにかく好奇心が強く、親に「なんでなんで」と聞いては、答えてくれないことに腹を立てていた記憶があります(笑)。
――小学校の先生の道を選ばれたのは?
まえママ:大前提として、とにかくいろんなことを経験したい!っていう思いがあって。親には「普通の人生を送りたくない」と言っていたくらい。
それで、大学卒業後、まずは自分の知らない世界を見てみようと青年海外協力隊員になったんですが、職種の条件として唯一合致していたのが理数科教師だったんです。
東アフリカのケニアで、中高生に数学を教えていました。
それまで教壇に立ったこともない小娘の私は16歳くらいに見えていたらしいですが(笑)、みんな授業に真剣に取り組んでくれていて。派遣期間を終えて帰国する間際、卒業生からお手紙をもらったんです。
「あなたが私の数学の基礎を作ってくれました」、「あなたの授業を受けた経験があったから、今、大学で勉強ができています」って。
それを読んだとき、私が考えて教えたことが、ほんの一部かもしれないけれど、誰かの人生を作るものになっているんだ。教育ってすごい!と、強く思ったんです。
それで帰国後さっそく免許を取得して、小学校の教員になりました。
「なんで」と思うところから始まる実験はかけがえのない経験に
――日本の小学校でのお仕事はどうでしたか。
まえママ:やっぱり、実験で子どもたちが喜んでくれるのがうれしくて。どんな学習内容でも、どんな簡単なものでも、体験するものはみんな絶対に喜ぶんですよ。理科の先生の仕事はとても楽しかったです。
一方で、自分の子どもと接する時間がかけがえのないものだということも強く感じるようになって、子どもが小さな時期こそ家にいられるようにしたいと思ったんです。
今は育児が中心の生活ですが、おかげさまでインスタグラムのフォロワーさんも増えて、毎日充実しています。

――元理科の先生として、『魔法のおうち実験教室』のなかで、授業やテストのために押さえておくべし!という実験などはありますか?
まえママ:それが……正直なところ、本作りも発信も、小学校の学習単元につなげようという意識を持ってやっていないんですよ。
「なんで?」と不思議に思うところから始まって、それを実際にやってみて、調べてみて、「そうなんだ!」と理解したり発見したり。そういう体験を数多くすることが大事!と思って、活動しているんです。
なかでも、いちばん始めの「なんで」って思えること、これは理科どころか教科の垣根も飛び越えて、すべての原点になると思っていて。
大人になっても、仕事で「なんであの商品は売れているんだろう?」というところから、売れる要素はどこなのか考え、「だったらうちの商品はこうしてみよう」、それがダメなら、「ここを変えてみよう」って、新しいアイデアや問題解決に繋げていきますよね。
とにかく「なんで」から始まるのが理科の実験で、あらゆる学びの縮図。
私が理科や科学に惹かれるのも、そういうところなんです。
「なんで」はチャンス!子どもも大人も成長の原点になる
――「なんで」こそが、学びの始まりなんですね。子どもから「なんでなんで!?」って聞かれることに辟易している親御さんも多いとは思いますけれど……。
まえママ:私は、辟易どころか、「なんで」と思ったこと自体がすばらしいってめちゃくちゃ褒めますよ!
「なんで」と聞かれても答えられないから困ってしまうという親御さんもいますが、答えられなくても全然問題ないと思います。図鑑とかで一緒に調べてみるのもいいし、AIに聞いてみてもいい。調べる余裕がなければ、「お母さんもわかんないから、調べてみてくれる? わかったら教えてほしいな」とお願いしてみたり。
逆に「なんで」と聞くことが少ないお子さんには、「これってなんでなんだろうね?」って、大人の方から投げかけてみてもいいと思います。
どちらにせよ、なかなか思うようにいかないことも多々ありますけどね。

――大人の方も勉強になりますね。
まえママ:大人になると、なんでも当たり前だと思ってしまう。「そんなの当たり前でしょ」「知らなくても大丈夫」なんてスルーしようとしてしまいがちだけれど、「なんで」は大切な原点。1つの「なんで」が、その人の人生を動かすことだってある。そう思ったら、なかなか見過ごすことはできないですよね。
本でもインスタグラムでも、写真や動画をみて「なんで!?」って思ってもらえたらうれしい。そこから始まる試行錯誤を楽しんでもらいたいなと思って、発信を続けています。
子どもの「なんで」は、大人の凝り固まった頭をほぐしてもらういい機会。『魔法のおうち実験教室』のなかで「なんで!?」に出会えたなら、お子さんと挑戦してみてはいかがでしょうか。実験あそびを楽しむ最中に得られる小さな発見が、大きな未来につながっていくかもしれません。
【書誌情報】
『楽しくあそんで 理系力が育つ!魔法のおうち実験教室』
著者:まえママ
科学ってまるで魔法みたい!理系脳が育つおうち実験あそびを元小学校の理科の先生が教えます。身近なペットボトルやストロー、風船や卵を使って、親子であそべる実験を紹介。掲載している実験は、ワクワク、不思議な変化がいっぱいで、子どもウケ抜群のものばかりです。子どもの「なぜ?」「どうして?」に答える解説つきなので、ご自宅であそびながら科学への興味を引き出し、理系の思考力を伸ばすことができます。かんたんなものから、自由研究に使える本格派まで難易度別に、3歳~小学生までのお子さま向けの実験を紹介しています。おうちでお子さまとできるあそびをお探しの親御さん必見です。夏休みの自由研究のまとめかたも解説しています。
★掲載している実験例★
・【簡単な実験】スライム
・【簡単な実験】混ざらない水
・【食べられる実験】ミラクルあわあわ
・【食べられる実験】フリフリ手作りアイス
・【食べられる実験】光るかき氷
・【動きがすごい実験】最強のシャボン玉
・【動きがすごい実験】海底火山の大噴火
・【ミラクルな実験】海底にねむる沈没船
・【ミラクルな実験】ファンタジーフォレスト
・【チャレンジ実験】DNAを取り出そう
・【チャレンジ実験】マジック貯金箱
著者:まえママ
instagram@mae_kosodate/
元小学校教諭。理科の先生。インスタグラムフォロワー13万人超。おうちにあるものでできる科学実験あそびを発信中。科学反応を応用したカラフルでダイナミックな「映える」実験が子どもに大人気。自身の理科教員の経験を活かし、理系の思考力を伸ばす実験レシピは、子どもと一緒にできる遊びを探している親たちからも大好評。
【取材・文】酒井絢子
フリーランスライター。クラフトからキャリア系までジャンルは問わず幅広く執筆活動中。