杉原麻美さんインタビュー【後編】「知ってる」「知らない」で雲泥の差!子どもの人生を左右する“歯”を育む、生活習慣と食事

新刊『歯並びをよくする離乳食・幼児食』発売記念・特別インタビュー

ご自身も子どものときから虫歯や歯並びに悩み、さらに娘さんも歯が生えるのが遅く、離乳食が思うように進まなかった経験をもつ小児歯科医の杉原麻美先生。離乳食・幼児食コーディネーターや口育士の勉強を通し、「きれいな歯並びを育てるには、『食』をはじめとする生活習慣が大事」と痛感したそう。初の著書となる『歯並びをよくする離乳食・幼児食』では、よい歯並びを育てるレシピも満載! 世の中のすべての親御さんに読んでほしい1冊です!(全3回連載のうち3回目)

取材・文:細井 秀美 撮影:天野憲仁(日本文芸社)


「食べない」原因は意外なところにあるかも?

クリニックには治療だけでなく、お子さんの歯や口への悩みを抱える親御さんもいらっしゃいます。
「離乳食が進まない」「ベーッと吐き出してしまう」という相談も多いですね。

理由として「口や歯の発達が遅く、月齢基準での離乳食と合っていない」という場合も少なくありません。

「月齢の目安よりも歯が少なくて、噛めないことが原因ですよ」とお伝えし、そこから食事を見直すことで食べられるようになるケースも多いですね。

離乳食って、赤ちゃんにとってはお口を使って食べることの「練習」なんです。
でも、親御さんの意識としては「本番」ですよね。
「食べさせないと」「この子を育てないと」という責任感がありますから。特に、「うちの子はよく食べるよ~」といった話をママ友などから聞くと、余計に焦ってしまう……。

離乳食ガイドは月齢だけを目安にしていることがほとんどなので、うまくいかないと焦ってしまうのも当然でしょう。私も離乳食・幼児食や口育の勉強をするまではそうでした。

離乳食・幼児食は、ぜひ、口の発達状況も併せて進めてみてくださいね。

「小さく」「やわらかく」……その食事が子どもの歯や口を未発達にする!?

娘に歯が生えてきたのは、1歳3ヵ月を過ぎてからでした。
一般的にこの月齢であれば、前歯4本に加え奥歯も上下4本が生える頃ですが、娘はゼロ。

そこで、たとえばにんじんを食べる場合には、月齢での目安である「1cm角ほどに切ってやわらかめに調理する」のではなく、歯なし期と同じくポタージュ状にして与えると、ちゃんと食べてくれました。

こんなふうに、「食材・栄養素は月齢に」「形状・硬さは歯の生え方や口の発達状況に」それぞれ沿って進めていくといいと思います。

最近は「誤嚥が怖いから」と食材をやわらかく、小さくする傾向がありますが、歯並びやお口の発達の面からいうと、それはNG。「発達状況に合った適切なかたさ・大きさ」にしていくことが大事なのです。

手づかみ+顔全体を使って楽しく食べよう

たとえば、本書の表紙にある「骨つき肉」。これはどれぐらいから食べられると思いますか?

――答えは「前歯上下4本+奥歯上下4本が生えてきたら(多くの子どもが生後15ヵ月ごろ~)」!

「早すぎない!?」とびっくりされた方もいるかもしれません。
ですが、これだけの歯があれば、前歯で噛みちぎって奥歯でしっかり噛めるものなのです。
ちなみにうちの娘は、歯がそれだけ生えてきた頃からクリスマスなどでよく出てくるような骨つき鶏もも肉をかぶりついて食べるのが大好きです(笑)。

同じぐらいの時期であれば、ブロッコリーを大きめに切って茎も一緒に食べさせたり、おにぎりやスティック状にしたリンゴをかじらさせたりするのもおすすめ。もっと歯が少ないうちであれば、焼き芋をかじりとりながら食べてもいいですね。

「手づかみ+顔全体を使って楽しく食べられる」がポイントです!

もちろん、3食すべてを「噛ませる食事」にする必要はありません。市販品もうまく使いながら、3食のうちどこか1品ぐらいはこうしたメニューをとりいれられるといいですね。

次回の記事では、おすすめの食事や歯医者選びのポイントについてお伝えします。

信頼できる小児歯科医の選び方と、正しい情報の取捨選択を

本書では「よい歯並びづくりのために日常生活でできること」をたくさんお伝えしています。
すべては実践できないかもしれませんが、よりよい歯育て、ひいてはよりよい子育てのためにも、まずは「知ること」から始めませんか? 

昨今はSNSなどでさまざまな情報が飛び交っていますが、エビデンスがあるか、誰が発信しているかなど、ぜひきちんとした資格や知識に基づいた「正しい情報」を取り入れてほしいと思います。

「信頼できるかかりつけの歯医者さんをもつ」ことも大事でしょう。

歯医者選びのポイントは、「相談しやすい雰囲気があり、質問にきちんと答えてくれる」こと。そして「きちんと知識をもっている」ことです。

看板に「小児歯科」「矯正歯科」と書かれていても、実際には専門・担当の先生がいないことも少なくありません。それでは、知りたいことにきちんと答えてもらえなかったり、質問に対してあいまいな答えが返ってきたりするかもしれません。

ホームページには、医師や医院についてのより詳しい情報が書かれているはずです。ぜひ、一歩踏み込んでチェックしてみてくださいね。

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参考)プレスリリース

発売リリース https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000692.000041489.html

即重版リリース https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000693.000041489.html

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【書誌情報】
『歯並びをよくする離乳食・幼児食』
著:杉原 麻美(すぎはら あみ) レシピ監修・制作:藤原 朋未(ふじわら ともみ)

『歯並びをよくする離乳食・幼児食』書影
【Amazonで購入する】

お子さんの歯並び、お口の状態、気にしていますか?

昔に比べ、やわらかいものを食べるようになった昨今、お口まわりの筋肉や、飲み込む力が未発達なままとなり、「でこぼこ歯」「出っ歯」「ポカン口」「受け口」などの、お悩みを持つお子さんが増えています。
歯並びや、噛み合わせの悪さが与える影響は多々ありますが、大人になってからもデメリットとなり続けるものばかりです。

「でも、歯並びは遺伝の影響では…?」と思った方にこそ、
手に取っていただきたいのが本書です。
実は0歳児からのミルクの飲み方、哺乳瓶の選び方、
離乳食・幼児食のメニュー、食べ方といったことのすべてが、
お子さんの歯並びにつながっているのです。

お口を育てる視点から、「月齢を目安にするよりも、お口の状態に合わせて進める」「誤嚥を防ぐ細かい切り方ばかりだと歯を使わず、お口の発達が促されない!」といった、離乳食・幼児食の新常識を解説し、一生ものの「きれいな歯並び」をつくる、離乳食・幼児食のフリージング&作りおきレシピをご紹介します。

【著者紹介】

杉原 麻美 (すぎはら あみ)
東池袋すぎはら歯科+kids 副院長

2015年日本大学歯学部卒業後、同大学付属歯科病院小児歯科学講座に入局。子どもや障がいのある方の歯科疾患、口腔機能について学ぶ。数軒の歯科医院勤務を経て、2024 年より現職。自身も幼少期から虫歯になりやすく、また歯並びが悪かったことから矯正治療も必要に。先の見えない歯科治療にあまりいいイメージがなかったこともあり、子どもが楽しく通える歯科医となって歯科疾患予防ができればと思い、小児歯科医の道へ。結婚出産後、娘の歯が生えてくるのが平均より遅かったこと、一般的な離乳食の進め方と娘の口腔内の状況が合わなかったことで悩み、産休中に離乳食・幼児食コーディネーターの資格を取得。その後、口育士の資格も取得。乳児、幼児の食事について学ぶなかで、小児歯科と離乳食・幼児食はかなり密接であり、口腔の健全な発達発育のためには食事のとり方が重要であることを痛感する。食事のとり方を含め、小児の虫歯予防、口腔機能発達についても指導やケアに注力している。

ホームページ https://www.sugihara-dental-kids.com/

Instagram @ higashiikebukuro_sugiharashika/

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