ファラオ=王じゃない!? 古代エジプトの“本当の支配者”とは?【眠れなくなるほど面白い 図解 古代エジプトの話】

ファラオとは何?

ファラオ=王ではなかった

マネトの歴史区分によると、古代エジプトでは、まず神々が国を支配し、その後、神の力を得た人間の王が、神と人間の仲立ちとして国を治めました。

王に求められたのは、宇宙の秩序とされる神の真理「マアト」を守り広めることでした。そのために王は神殿を造り、供物を捧げ、宗教儀式が正しく行われるように尽力しました。そうすることで、国の繁栄と平和がもたらされると考えられていたのです。

「ファラオ」とは、古代エジプトの言語で「偉大な家=王宮」を意味します。もともとは王の権力を示す言葉でしたが、やがて王そのものを指すようになりました。ただし、古代エジプトには地域ごとに王がいた時代もあり、最初からファラオ=王ではありません。王がファラオと呼ばれるようになったのは、新王国時代の第16王朝頃からとされています。のちに、それ以前の王たちも「ファラオ」と呼ばれるようになりました。

ファラオになるには、前王の正統な後継者であることが認められなければなりません。第13王朝のセティ1世とラメセス2世の記念神殿の壁には、歴代の王の名と称号が刻まれた「アビドス王名表」が残されています。王名表は過去の王たちへの崇拝の証であり、王位継承の正統性を示すとともに、ファラオであることの裏づけでもありました。

ファラオの装いは権力の象徴

王冠は神の権威が王に移行することを象徴するもの。赤冠は下エジプト、白冠は上エジプト、赤と白の二重冠は上下エジプトの支配者であることを表し、青冠は戦のときにかぶることが多かった。

王の装い

・赤冠:下エジプト
・白冠:上エジプト
・二重冠:上下エジプト
・青冠:戦い
・ネメス(頭巾):権威
・付けひげ:権威
・ヘカ(杖):王権
・ネケク(打ち棒):下エジプトの農耕
・ウアス(先が二股の杖):支配・統治

ファラオに三重冠を授けるネクベト神とウアジェット神

王は五つの名をもっていた

王の名前は、 ①ホルス名、②二女神名、③黄金のホルス名、④即位名、⑤誕生名の五つの名前で構成される。

ラメセス2世の五つの称号

① カーネケト・メリマアト
② メクケメト・ウアフカアスウト
③ ウセルレンプウト・アアネケトウ
④ ウセルマアトラー・セテプエンラー
⑤ ラメセス・メリアメン

◆王の五つの称号

● ホルス名:王はホルス神の化身/シンボル:上部にハヤブサがとまる
● 二女神名:上下エジプトの統一/シンボル:ヘビとハゲワシ(二女神の象徴)
● 黄金のホルス名:セトに勝利したホルス/シンボル:金のヒエログリフにタカがのる
● 即位名:上下エジプトの王/シンボル:スゲとミツバチ
● 誕生名(本名・太陽神ラーの息子名):誕生時につけられる名/シンボル:ガチョウと太陽

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 古代エジプトの話』著:河合 望(エジプト学者・考古学者/筑波大学人文社会系教授)

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 古代エジプトの話』
著:河合 望(エジプト学者・考古学者/筑波大学人文社会系教授)


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