目先の誘惑に負ける理由―― 現在バイアスとは【眠れなくなるほど面白い 図解 認知バイアス】


将来の苦労より今の楽しさ
【現在バイアス】
目先の利益に目がくらんでしまう
ダイエットをしようと思ったのに、目の前にあるおいしそうな食べ物をつい食べてしまう…というのはよくある話です。これは、目先の小さな利益と将来の大きな利益の比較において、目先の利益のほうを過大に見積もってしまう「現在バイアス」という思考から来るものです。これも認知バイアスの1つです。
たとえば、「今すぐ1万円もらえる」と「1週間後に1万100円もらえる」のどちらがよいかと尋ねると、多くの人は「今すぐ1万円もらえる」のほうを選ぶ傾向があります。後者は1週間で1%も利息がつくのに、目先の利益に目がくらんで前者を選んでしまうわけです。
ところが、「1年後に1万円もらえる」と「1年1週間後に1万100円もらえる」の比較になると、こちらは後者を選ぶ人が多くなります。将来のことの比較だと、冷静にお得なほうを選べるわけです。現在バイアスがいかに影響しているか、よくわかる例かと思います。
また、嫌なことを後回しにして目先の楽しみを優先してしまうのも、現在バイアスの典型です。冒頭で紹介したダイエットをサボッてしまう件や、仕事の期限が迫っているときについ遊びたくなってしまう場合などは、現在バイアスで物事を考えていないか、一度自分に問いかけて行動を見つめ直してみてください。
「今すぐ」を過大に重視してしまう
現在バイアス = 将来の大きな利益の可能性よりも目先の小さな利益を重視してしまう心理


参考文献
- Pierre Chandon and Brian Wansink, “When Are Stockpiled Products Consumed Faster? A Convenience-Salience Framework of Post-Purchase Consumption Incidence and Quantity,” Journal of Marketing Research: 44, 84-99, 2002.
- Eldar Shafir, “The Behavioral Foundations of Public Policy,” Princeton Univ Press, 2012. 。[エルダー・シャフィール(白岩祐子/荒川歩訳)『行動政策学ハンドブック:応用行動科学による公共政策のデザイン』福村出版、2019年]
- 大竹文雄『行動経済学の使い方』岩波書店(岩波新書)、2019年。
- ピアーズ・スティール(池村千秋訳)『ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか』CCCメディアハウス、2012年。
- 友野典男『行動経済学 経済は「感情」で動いている』光文社(光文社新書)、2006年。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 認知バイアス』監修:高橋 昌一郎
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 認知バイアス』
監修:高橋 昌一郎
「認知バイアス」は物事の判断が、偏見や先入観、歪んだ情報・データ、個人的経験則・記憶、思い込みなどによって、非合理的になる心理現象。社会学(社会心理学)や経済学(経済行動学)、論理学、認知科学など幅広いジャンルで研究されている。
本書では、数ある「認知バイアス」から、「確証バイアス」「正常性バイアス」「同調性バイアス」「希少性バイアス」をはじめ「ハロー効果」「ダニング=クルーガー効果」「プロスペクト理論」「スリーパー効果」など、読者の関心や興味が強いと考えられるもの、身近で陥りやすい危険の高いもの、知っていると生活にも役立つものを中心に厳選して、図解でわかりやすく伝える。
フェイクニュースや詐欺的行為や犯罪が蔓延し、AI技術の向上などによって、「何が正しいか」わかりにくくなった現代の世の中で、賢く生きていくためには必須の知識!
この記事のCategory
オススメ記事

信念が思考を歪めている? “信念バイアス・信念の保守主義”とは【眠れなくなるほど面白い 図解 認知バイアス】

作られた記憶にだまされる私たち “フォルス・メモリ”の正体とは【眠れなくなるほど面白い 図解 認知バイアス】

投資が怖いのはなぜか 損失回避と現状維持バイアス【眠れなくなるほど面白い 図解 認知バイアス】

日常に見られる認知の歪み「認知バイアス」とは一体何か?【眠れなくなるほど面白い 図解 認知バイアス】

“なぜやめられないのか”? 賭け事と認知バイアスの関係【眠れなくなるほど面白い 図解 認知バイアス】

「やるな」と言われるとやりたくなる心理の正体とは!?【眠れなくなるほど面白い 図解 認知バイアス】

人の思考システムは2つある!? 我々はどう考えて行動を起こすのか【眠れなくなるほど面白い 図解 認知バイアス】
