「謝ったらと負け」と思っていませんか? 自分の非を認められない心理とは【眠れなくなるほど面白い 図解 認知バイアス】

自分の非を認めるのはなぜ難しいのか
【自己肯定化理論】

自己肯定感を守ろうとする心理

何か失敗をしてしまったときや、相手を傷つけてしまったときなどに、素直に謝れない人を見たことがないでしょうか。これは「自分は悪くない」という気持ちが思考や判断に影響を与えてしまう認知バイアスの1つ、「自己肯定化理論」が現れたものです

人間は誰もが自分自身を肯定的に評価する自己肯定感(自尊感情)を持っていて、それを自然と守ろうします。ただ、この自己肯定感が強すぎたり弱すぎたりすると素直に謝れなくなってしまうことが、心理学者アンドリュー・ハウエルらの研究によって示されています。自己肯定感が高すぎる人は、「自分がミスをするはずがない」という気持ちが勝ってしまい、自分の非をなかなか認められません。反対に自己肯定感が低すぎる人は、謝ることによって自己肯定感がさらに傷つくことを恐れ、素直に謝ることができなくなってしまいます

このような状態にならないようにするには、適切な自己肯定感を持つことが重要です。心理学者カリーナ・シューマンは、下部で紹介している方法で、自己肯定感を保ったまま素直に謝れるようになることを示しました。もし自分の非をなかなか認められない状態になったり、そういう人に出会ったりしたら、この方法を試してみると効果的かもしれません。

自己肯定感が邪魔をして謝りにくくなる

自己肯定化理論= 自分を正当化して自尊感情を守ろうとする心理

▼自己肯定感が高すぎる人▼

▼自己肯定感が低すぎる人▼

どちらもなかなか自分の非を認めにくい ➡ 認知バイアス

どうすれば素直に非を認められるようになるか?

自己肯定感を再認識する
 ↓
ミスを振り返る
 ↓
謝り方を考える
 ↓
謝ることは相手との関係修復につながることを確認する
 ↓
【自己肯定感を傷つけず謝罪できるようになる】

※Karina Schumannの研究より

参考文献

  • Claude M. Steele, “The Psychology of Self-Affirmation: Sustaining the Integrity of the Self,” dvances in Experimental Social Psychology: 21,261-302, 1988.
  • Andrew J. Howell, Raelyne L. Dopko, Holli-Anne Passmore and Karen Buro, “Nature connectedness: Associations with well-being and mindfulness,”Personality and Individual Differences: 51, 166-171, 2011.
  • Karina Schumann, “An affirmed self and a better apology: The effect of self-affirmation on transgressors’ responses to victims,” Journal ofExperimental Social Psychology: 54, 89-96, 2014.

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 認知バイアス』監修:高橋 昌一郎

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 認知バイアス』
監修:高橋 昌一郎

『眠れなくなるほど面白い 図解 認知バイアス』書影
【Amazonで購入する】

「認知バイアス」は物事の判断が、偏見や先入観、歪んだ情報・データ、個人的経験則・記憶、思い込みなどによって、非合理的になる心理現象。社会学(社会心理学)や経済学(経済行動学)、論理学、認知科学など幅広いジャンルで研究されている。

本書では、数ある「認知バイアス」から、「確証バイアス」「正常性バイアス」「同調性バイアス」「希少性バイアス」をはじめ「ハロー効果」「ダニング=クルーガー効果」「プロスペクト理論」「スリーパー効果」など、読者の関心や興味が強いと考えられるもの、身近で陥りやすい危険の高いもの、知っていると生活にも役立つものを中心に厳選して、図解でわかりやすく伝える。

フェイクニュースや詐欺的行為や犯罪が蔓延し、AI技術の向上などによって、「何が正しいか」わかりにくくなった現代の世の中で、賢く生きていくためには必須の知識!

この記事のCategory

インフォテキストが入ります