成功は自分の手柄、失敗は他人のせい? ”セルフ・サービング・バイアス”とは【眠れなくなるほど面白い 図解 認知バイアス】


成功したときだけ自分の手柄を強調する人
【セルフ・サービング・バイアス】
誰だって失敗を認めたくはない
成功はちゃっかり自分の手柄にして、失敗はすべて部下のせい。あなたの回りにこんな嫌な上司や先輩はいませんか?こうした自分をひいきしてしまうバイアスは大なり小なり誰にでも備わっているものです。
たとえばあなたがとても大切な試験に合格したとします。その要因を聞かれたときにどう答えるでしょうか?謙遜しながらも自分の努力や能力をチラつかせてしまう人は多いと思います。一方、試験に失敗したときは、「忙しくて勉強する時間がなかった」とか「その日は体調が悪かった」などと原因を自分以外の何かのせいにしてしまいがち。このように多少事実と違っていても自分に都合よく解釈し、結論づけようとする心理傾向のことを「セルフ・サービング・バイアス」といいます。つねに自分にとっ
て有利な解釈をすることで自尊心を傷つけることなく、精神的な健康(メンタルヘルス)の維持にも貢献しているのです。
一方で強すぎるセルフ・サービング・バイアスは人を傲慢にし、成長を阻害する原因にもなります。成功したときは嬉しい気持ちを抑えて少し控えめに。逆に失敗したときは自分の解釈が客観的事実と大きく乖離していないか、冷静に俯瞰してみましょう。バイアスの存在に気づけば、きっと自制もできるはずです。
手柄は自分、失敗は誰か(何か)のせい?
事故の回避に成功した場合
『成功』したのは…
- 自分の運転技術のおかげ
- 日頃から安全運転してるから
と考えてしまいがち

事故を起こしてしまった場合
『失敗』したのは……
- 雨でスリップしたせい
- 車の調子が悪かったから
と考えてしまいがち

自分に都合よく解釈してしまう心理傾向が『セルフ・サービング・バイアス』である
参考文献
- Miller, D. T & Ross, M. (1975). Self-serving biases in the attribution of causality: Fact or fiction?. Psychological Bulletin 82: 213-225.
- 北山 忍 (1998). 自己と感情-文化心理学による問いかけ 日本認知科学会(編) 認知科学モノグラフ9 共立出版
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 認知バイアス』監修:高橋 昌一郎
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 認知バイアス』
監修:高橋 昌一郎
「認知バイアス」は物事の判断が、偏見や先入観、歪んだ情報・データ、個人的経験則・記憶、思い込みなどによって、非合理的になる心理現象。社会学(社会心理学)や経済学(経済行動学)、論理学、認知科学など幅広いジャンルで研究されている。
本書では、数ある「認知バイアス」から、「確証バイアス」「正常性バイアス」「同調性バイアス」「希少性バイアス」をはじめ「ハロー効果」「ダニング=クルーガー効果」「プロスペクト理論」「スリーパー効果」など、読者の関心や興味が強いと考えられるもの、身近で陥りやすい危険の高いもの、知っていると生活にも役立つものを中心に厳選して、図解でわかりやすく伝える。
フェイクニュースや詐欺的行為や犯罪が蔓延し、AI技術の向上などによって、「何が正しいか」わかりにくくなった現代の世の中で、賢く生きていくためには必須の知識!
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