純白で美しい……別名は〝殺しの天使〟[ドクツルタケの毒]【眠れなくなるほど面白い 図解 毒の話】

純白で美しい……別名は〝殺しの天使〟[ドクツルタケの毒]
症状が収まっても油断大敵
ドクツルタケは、日本の代表的な猛毒キノコです。その毒性の強さは、欧米で「殺しの天使」、「死の天使」という異名で知られるほど。「α -アマニチン」などの猛毒を持ち、たった1本食べただけでも命を落とす危険があります。
ドクツルタケによる食中毒の特徴は、小康状態となる偽回復期をはさんだ2段構えで症状が出ることにあります。口にしても、すぐには症状はあらわれず、食後6~24時間経ってから嘔吐や下痢がはじまり、それが1日程度でいったん収まります。すると小康状態のあと、4~7日後に肝不全や腎不全などの多臓器不全が生じ、重症の場合では1週間ほどで死に至ります。
アマニチン類には解毒剤がないので、速やかな胃洗浄が唯一有効な治療法となります。ところがドクツルタケを食べた場合、症状が出るまでタイムラグがあるのが問題です。それから胃洗浄をしても手遅れになる恐れがあるのです。
ドクツルタケと同じテングタケ科に属する毒キノコに、タマゴテングタケ、シロタマゴテングタケもあり、ドクツルタケを含むその3種は「猛毒御三家」と呼ばれています。いずれもアマニチン類の猛毒を含み、多くの食中毒事故を引き起こしています。キノコは判別がつきにくいので、キノコ狩りは必ず上級者からしっかりとしたレクチャーを受けることが大切です。
猛毒キノコ ドクツルタケの特徴
中毒症状は2段構え
症状が2回に分かれる。最初は1日程度で収まり、偽回復期を経て、症状の重い2期目が訪れる。
「つば」と「つぼ」がある
傘の下に「つば」、根元に「つぼ」がある。つばとつぼの両方を持つキノコは危険なものが多い。
恐ろしい「猛毒御三家」
ドクツルタケとならんで「猛毒御三家」と称されるこの2種も、やはり2段構えの症状を発症する。また、外形上も「つば」と「つぼ」を持つ点がドクツルタケと共通している。
タマゴテングタケ
全世界のキノコ中毒の9割を占める。日本ではあまり発見例は多くない。
シロタマゴテングタケ
タマゴテングタケの変種と考えられている。日本での中毒例も多い。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 毒の話』監修:船山 信次
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 毒の話』
監修:船山 信次
日常生活のなかで、毒性のあるものを誤食したり、毒を持つ生物に触れたりして中毒症状が出たというケースは少なくありません。
スイセンやキノコの誤食など毎年のように発生しており、毒は非常に身近な存在です。
本書はまず毒とはなにかという毒の定義や作用などの基礎を化学や薬学の知識がない人にもわかりやすく解説。
例えば「地球上で最凶の毒は?」「青酸カリって舐めても大丈夫?」など、気になる毒の雑学とともに紹介します。
また、毒を持つハチ、カエル、クラゲなどの生き物やスイセン、アジサイ、トリカブト、カエンタケなどの植物やキノコ、アスベスト、ダイオキシン、火山ガスなど環境系の毒、
依存度が高いコカイン、危険ドラック、覚せい剤などの麻薬……etc.
人体に影響を及ぼすあらゆる毒を収録!
誰かに教えたくなる毒の最新知識や雑学が詰まった一冊です。
この記事のCategory
オススメ記事

ネズミやモグラなどの害獣よけにも使われる[ヒガンバナの毒]【眠れなくなるほど面白い 図解 毒の話】

ヘビの毒は2種類! 日本の“三大毒ヘビ”に要警戒【眠れなくなるほど面白い 図解 毒の話】

死を招く猛毒が医療の希望に!? 超貴重なサソリの毒の秘密【眠れなくなるほど面白い 図解 毒の話】

2回刺されると死ぬ……?[ハチの毒]【眠れなくなるほど面白い 図解 毒の話】

最強の毒グモはタランチュラじゃない!? 1匹で80人の命をうばう脅威のクモとは【眠れなくなるほど面白い 図解 毒の話】

擬態に気づかず踏んでしまうと一大事!? 青い斑点は危険のサイン[タコの毒]【眠れなくなるほど面白い 図解 毒の話】

小さな最強の猛毒の持ち主!モウドクフキヤガエルの驚異的な力【眠れなくなるほど面白い 図解 毒の話】
