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「赤壁の戦い」諸葛亮の奇策がハマる【三国志】

Text:澄田 夢久

干し草に十万本の矢を奪うというまさかの策

長江の対岸を挟んでの曹操との睨み合いも日を重ねていた。そんな折、周瑜は、劉備を亡き者にせんと自陣へ誘う。劉備は関羽を供に現れた。周瑜は、殺意を隠して酒宴でもてなし、隙をうかがう。だが、関羽が剣に手を掛けている。周瑜は、関羽を恐れて手が出せなかった。

その様子を諸葛亮が盗み見ていた。やがて劉備が岸辺まで戻ると、待っていた諸葛亮がにこやかに会釈をして、劉備が命を狙われていたことを話し、自分も狙われていると告げる。

劉備は、共に夏口へ戻ることを勧めるが、諸葛亮は「主公、十一月二十日から、趙子龍どのに小舟に乗ってもらい、長江の南岸で待機するようお願いしてください。自分は東南の風が吹き始めたら戻ることでしょう」と判じ物のような言葉を残し去っていく。

周瑜は、劉備を刺殺できなかったことに腹立たしさを抑えきれない。そこに曹操の封書を使者が持参したという。表書きには「漢の大丞相より周都督へ直披」とある。周瑜は、さらに腹を立て、開封もせず引き裂き、使者さへも斬り殺し、その首を使者の従者に持たせて曹操に届けさせた。

迎え撃つ呉の軍船も、群れなす魚影のように川面を埋め尽くす。この戦いは、曹操と周瑜の初戦である。だが、この船戦はあっけなく勝負がついた。甘寧麾下の矢衾、蒋欽、韓当らの果敢な突撃で、水戦に不慣れな北方の兵らは右往左往。初戦は周瑜の勝ち戦となったのである。

さて、ここからの曹操と周瑜は、騙し合い、内訌を画策する。その犠牲となったのが、蔡瑁と張允だった。曹操が送った間者に、周瑜が蔡瑁の偽の手紙を盗ませ、裏切ったと見せかけて、曹操に斬り殺させたのだ。

周瑜は、諸葛亮にも罠を仕掛ける。「自軍には矢が足りない。十日以内に十万本用意していただきたい」と無理押しする。ところが、諸葛亮はあっさりと承諾し、それも「三日以内に揃えましょう、それが叶わなければ処罰を受ける」と言うのである。周瑜は、内心小躍りして喜んだ。諸葛亮が自ら墓穴を掘ったと確信したからだ。

諸葛亮は、三日目深更、長江が霧に霞むと調達した二十隻の走舸 を縄でつなぎ漕ぎ出していく。船の両舷には干し草が積まれている。曹操の水軍本営に近づき、太鼓と鬨ときの声で接近を知らせると、敵の攻撃かと喫驚した曹操軍が、陣じん風ぷうに煽られる雨滴のごとく矢を射かけてきた。

日が昇り、霧が晴れてくると諸葛亮は船を急ぎ戻す。干し草には十万本を超える矢が突き刺さっていた。

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 三国志』
著:澄田 夢久 監修:渡邉 義浩

シリーズ累計発行部数160万部突破の人気シリーズより、「三国志」について分かりやすく解説した一冊。魏・蜀・呉、三国の興亡を描いた『三国志』には、「桃園の誓い」「三顧の礼」「出師の表」「泣いて馬謖を斬る」など心打つ名場面、また「水魚の交わり」「苦肉の策」「背水の陣」「髀肉の嘆」など名言や現代にも通じる格言も数多く登場する。また、曹操、劉備、孫権、孔明、関羽、張飛、趙雲、周瑜、司馬懿など個性豊かで魅力的な登場人物に加え、官渡の戦い、赤壁の戦い、五丈原の戦い等、歴史上重要な合戦も多い。英雄たちの激闘の系譜、名場面・名言が図解でコンパクトにすっきりわかる『三国志』の決定版!

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