壁画に描かれた絶滅したオオツノジカ “メガロケロス”【眠れなくなるほど面白い 図解 古生物の話】

メガロケロス
古代人も絵に描いた絶滅したオオツノジカ
フランス西南部にあるラスコー洞窟には、およそ2万年前の人々が描いた貴重な壁画が数多く残されています。そのなかに驚くほど巨大な角をもつシカの絵があるのをご存知でしょうか。このシカは、新生代新第三紀の鮮新世に登場し、第四紀更新世に繁栄したオオツノジカ類のひとつであるメガロケロスではないかと考えられています。
メガロケロスという属名は「大きな枝角(シカ類が持つ枝分かれした角のこと)」という意味で、ユーラシア大陸の北西部に生息していました。この属の種のひとつであるメガロケロス・ギガンテウスの化石がアイルランドでたくさん見つかっているため、ヨーロッパではアイリッシュ・エルクと呼ばれることもあります。
メガロケロスは、現在知られているなかでは史上最大のシカです。体長は約3メートルで、肩の高さは約2メートル、体重700キロ近くありました。印象的な枝角は、左右の幅3メートル以上ある個体が見つかっています。現在のヘラジカのように、オス同士がメスを巡って戦うときにぶつけあったと考えられています。
残念ながらメガロケロスは約8千年前には絶滅してしいましたが、壁画の存在は、この巨大なシカが人類と共存した時期があったことを示しています。ただし、オオツノジカの仲間には生き残りの種類がいます。ダマジカです。体は大きくありませんが、メガロケロスのように角の後ろにのびた部分が手のひらのようになっています。
オオツノジカ類が登場した新第三紀鮮新世というのは、地球規模での寒冷化が進んだ時期で、南極大陸だけでなく、北半球にも氷床が広がりはじめていました。
史上最大のシカ メガロケロス
両角をあわせると約45キロ
肩高約2メートル 約1.6メートル
両方の角を合わせると、45㎏ほどもある。重い角を支えるため、首や背中の筋肉が発達している。
メガロケロス
新生代 第四紀更新世
哺乳類 有胎盤類 鯨偶蹄類 反芻類
シカ類
角の両端幅 最大約3.6メートル
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 古生物の話』代表監修:大橋 智之
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 古生物の話』
代表監修:大橋 智之
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