毒と薬ってホントは同じ?
使い方を誤れば薬も毒になる
体に害を及ぼす毒と、体調を整えて回復させる薬。正反対のもののように思えますが、実は毒と薬に明確な区別はありません。毒性しかない、またはよい効果しかない物質は存在せず、すべてのものは毒にも薬にもなりえる可能性を持っています。
たとえば麻薬として有名なモルヒネは、吐き気や眠気をもたらし、高い依存性を持つ危険な物質です。しかし、医療現場では麻酔薬として用いられ、激しい痛みを緩和する効果があります。使い方や服用する量の差で、もたらされる効果は大きく異なってくるのです。
もっと身近にあるものでも同じことがいえます。人間が生きていくうえで欠かせない水は、適量を摂取すれば体を健康へと導きますが、あまりに摂取しすぎると病気になってしまうことがあります。食後の一息によく飲まれるコーヒーも、単純に味や香りを楽しんだり眠気覚ましに用いられたりする一方で、含まれるカフェインには大量に摂取すれば、最悪の場合、死に至る毒性もあるのです。また、薬にも副作用という望ましくない作用があります。
普段、毒とは思わずに口にしている食べ物や薬が、用法用量を間違えれば体に害を及ぼす元凶となります。日ごろから十分に注意しておくに越したことはないでしょう。
毒か薬かは使い方で変わる
適量を摂取すると……「薬」
乾燥させ弱毒化処理されたトリカブトの塊かい根こんは「附ぶ子し」と呼ばれ、漢方薬に配合される。
誤った方法・量で摂取すると……「毒」
猛毒で知られるトリカブトは、嘔吐やしびれを引き起こし、窒息死することも。
毒の毒として・薬としての作用
モルヒネ
●薬としての作用:激しい痛みを緩和する
●毒としての作用:吐き気や眠気などをもたらす。依存性が高い。
亜砒酸
●薬としての作用:ある種の白血病治療への応用。
●毒としての作用:皮膚炎や神経障害、腎臓障害などを引き起こす。
タミフル
●薬としての作用:インフルエンザの症状を緩和する。
●毒としての作用:吐き気、下痢、突発的な異常行動、突然死などを引き起こす。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 毒の話』監修:船山 信次
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 毒の話』
監修:船山 信次
日常生活のなかで、毒性のあるものを誤食したり、毒を持つ生物に触れたりして中毒症状が出たというケースは少なくありません。
スイセンやキノコの誤食など毎年のように発生しており、毒は非常に身近な存在です。
本書はまず毒とはなにかという毒の定義や作用などの基礎を化学や薬学の知識がない人にもわかりやすく解説。
例えば「地球上で最凶の毒は?」「青酸カリって舐めても大丈夫?」など、気になる毒の雑学とともに紹介します。
また、毒を持つハチ、カエル、クラゲなどの生き物やスイセン、アジサイ、トリカブト、カエンタケなどの植物やキノコ、アスベスト、ダイオキシン、火山ガスなど環境系の毒、
依存度が高いコカイン、危険ドラック、覚せい剤などの麻薬……etc.
人体に影響を及ぼすあらゆる毒を収録!
誰かに教えたくなる毒の最新知識や雑学が詰まった一冊です。
公開日:2025.03.01
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