球界を斬る!プロ野球選手の年俸報道について
スター選手ともなれば、サラリーマンが生涯で稼ぐ金額の数倍以上をたった1年で稼ぎ出すプロ野球選手。でもなぜ、その「年俸額」が報道されるのか?
推定でも意外と当たる!?プロ野球選手の年俸事情
「菅野智之、プロ野球史上最高額タイの6億5000万円で契約更改!」2018年12月17日、2年連続で沢村賞に輝いた菅野智之は巨人の球団事務所で契約更改交渉に臨み、前年から2億円アップでサインした。翌日、スポーツ新聞各紙は当然のように菅野智之の「高額年俸」を報道。確かに、自他ともに認める日本のエース・菅野智之がこの評価を受けるのは、誰もが納得だろう。プロ野球の世界では、このように選手の年俸が基本的にすべて報道される。もちろん、金額は「推定」とされるのだが、以前元プロ野球選手からは「結構当たっている」という話を聞いたこともある。
考えてみると、プロスポーツとはいえ選手個人の年俸額=収入は、誰がどう考えても「個人情報」だ。一般人の観点からすれば、よほど仲の良い友人であっても、自分の年収を教えたいとは思わないだろう。もちろん、高額年俸を手にするプロ野球選手が「これだけもらっているんですよ」と報道されることは、子どもたちに夢を与えたり、モチベーションのひとつになるかもしれない。
しかし、である。現在の報道を見てみると、菅野智之に代表されるトップレベルのスーパースター以外、例えば2軍でくすぶっている選手や育成契約の選手まで、その年俸額が報道されている。額でいえば数百万円程度。その辺のサラリーマンと同等か、育成契約の場合は初任給以下のケースもある。選手の立場からすれば、たまったもんじゃない。
もちろん、中には金額を「推定」されることを嫌がって「〇〇円です」と会見で正直に金額を公表する選手もいる。プロ野球選手の年俸額が報道され始めたのは1970年代、王貞治の年俸が当時のメジャーリーガー並みに跳ね上がったあたりからだという。以降、気付けばプロ野球全選手の年俸額は「推定」されて新聞やネットニ ュースで報道されている。
選手会も、年俸報道について自粛を呼び掛けたこともある。いきなりすべてを非公開&報道自粛というのは難しいだろうが、時代を考えると今後は報道の在り方について考えなければいけない時期が来ているかもしれない…。まぁ、「契約更改を勝手に査定!」なんて企画を掲載している本誌『がっつり!プロ野球』がこれを言うのも、おかしな話なのだが…。
初出『がっつり!プロ野球23号』
公開日:2020.04.23