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F1ブーム再び!? 角田裕毅の積極性【二宮清純コラム スポーツの嵐】

Text:二宮清純

デビュー戦でポイントを獲得した角田裕毅

今年のF1グランプリは、7年ぶりに日本人ドライバーが誕生したことで、久しぶりに盛り上がりの兆しを見せている。

話題の中心にいるのが若武者・角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)。さる3月28日、バーレーン・サヒールでの開幕戦において20歳10カ月でデビューを果たし、中嶋一貴が持っていた22歳9カ月の日本人最年少記録を更新した。

決勝は9位でフィニッシュし、2ポイント獲得。日本人ドライバーのデビュー戦でのポイント獲得は初めてだった。

この角田裕毅という男、何者なのか。

プロフィールを確認すると2000年5月の生まれだから、1987年から94年にかけての国内でのF1ブームは“昔話”のような感覚だろう。

レースを始めたきっかけは「父親がフェルナンド・アロンソのファン」だったから。アロンソはスペイン出身のレーシングドライバーで、03年から14年までルノー、フェラーリ、マクラーレンで活躍し、05年と06年にはF1世界チャンピオンに輝いている。

デビュー戦では26周目で、このアロンソを掴まえた。その瞬間、角田は「ワオ! アロンソをパスした!」と雄叫びを上げたという。

後で英TVのインタビューに、角田は後方からずっとアロンソの走りをチェックしていた、と明かした。
「彼を追いかけながら、コーナーのクリアの仕方やタイヤマネジメントを観察していました。パスして前に出た後、彼がやっていたように走ったら、いくつかのコーナーでいい走りができました」

少年時代、自らのアイドルであったベテランの走りを後方から観察し、それを素早く取り入れてみせるあたり並のルーキーではない。

付け加えると、デビュー戦ではセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)、キミ・ライコネン(アルファロメオ)と、計3人のチャンピオン経験者を後景に追いやってみせた。

角田は昨季、欧州F2でランキング3位につけたが、関係者は「チャンピオンのミックより、スピードならユウキの方が上田」と評価していた。ちなみにミックとは「皇帝」の異名をとる、あのミハエル・シューマッハーの長男だ。

イタリア・イモラでの2戦目こそ予選、決勝ともにクラッシュし、結果を残せなかったものの、雨に濡れた路面でも果敢に王者ルイス・ハミルトンを抜きにかかるなど、攻めの姿勢は随所に垣間見えた。クラッシュは、いわば“成長痛”のようなもの。20歳の視線の先には、無限の可能性が広がっている。

初出=週刊漫画ゴラク2021年5月7日発売号