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”石井琢朗さんのような遊撃手へ”。ベイスターズ、森敬斗指名のいきさつとは?

Text:尾関雄一朗

今年もまた新しいシーズンが始まる。中でも注目されるのが昨秋のドラフトを経て入団する1年目の選手たち。
いま改めて19年ドラフトのドキュメントをここにお届けする。
連載第3回は、森敬斗。2軍キャンプで三浦大輔2軍監督自らバッティングピッチャーを務めるなど、走攻守に期待がかかる逸材だ。

ドラフトドキュメント①奥川恭伸(別タブで開きます)

■19年ドラフトドキュメント③森下ではなく森だった

目玉の一人である森下暢仁(明治大)の名前が最初にコールされたのは、意外にも5番目の広島だった。
ドラフト前日、森下への入札を公表していた。広島・聡彦スカウト統括部長は、決め手や見通しをこう説明する。

「奥川(恭伸)も田中将大(ヤンキース)に匹敵するピッチャーですが、即戦力として期待しすぎると故障が不安。オーナーや佐々岡(真司)新監督の意向も聞きながら、即戦力のピッチャーとして森下がほしいという結論で一致しました。ヤクルトは森下にくると思っていました。ヤクルトも監督が代わり、最後まで出方がわからず怖かったです」
公表については「競合になってもいいからです。このほうが気持ちいいじゃないですか」ときっぱり。
前日のスカウト会議後、労をねぎらう食事会を開いたが、覚悟は決まっていたから清々しい心境だった。
「その日の晩メシがおいしく食えた。翌日にドラフト会議がなければ、どれだけでも飲めたんじゃないかな」と冗談交じりに振り返る。

広島の後、ロッテは佐々木、阪神は奥川、楽天は佐々木(朗希)と無事に通り過ぎた。
次はDe NA。苑田スカウト統括部長は「DeNAは間違いなく森下にくる」とみていた。
「第1巡選択希望選手――横浜DeNA、森……」
ところが、意外な形でアナウンスが続く。

「敬斗」
森下ではなく、森敬斗(桐蔭学園高)だった。走攻守揃った高校生遊撃手だ。
「『森下』みたいな言い方に聞こえたから、やられた、重複だと思った。アナウンサーも意地悪だよ、カープを驚かしてやろうと思ったんじゃないの(笑)。
DeNAがこなかったから、円卓の面々と顔を見合わせて喜びました」(苑田スカウト統括部長)
このサプライズ指名、DeNAの神奈川県担当・稲嶺茂夫スカウトも聞かされていなかったという。
ドラフト1位の決め方は球団ごとで異なるが、DeNAは球団やスカウトの上層部、ラミレス監督などごく一部のみで直前に結論を出した。

「何も知りませんでした。控室で中継を見て、我々も『おっ』という感じです。ドラフト会場の観客のみなさんと同じですね。ただ、森と聞いても特別な驚きはなかったです。他球団も、外れ1位で森を挙げる構想はもっていたでしょう。ウチは昨年、小園(海斗/報徳学園高~現・広島)を入札で指名したように、遊撃手は明確な補強ポイント。チームに必要な選手を獲れました」(稲嶺スカウト)

ドラフト1位を決める首脳会談に、各地区の担当スカウトは介在しなかった。とはいえ、その前段階で担当スカウトが評価を下げていれば、そもそも俎上に載らない。逆も然りだ。
「森はポテンシャルとセンスが素晴らしい。足、肩は高校生トップレベルで、バッティングも思い切りがよく、バットをしっかり振ってとらえてくる。」
「選球眼もよく、本当に嫌なバッターです。昨秋の神宮大会ではエラーもあり、正直、雑だなという印象でしたが、翌春のセンバツですごく成長していました。相当練習していたようです。ウチでいえば石井琢朗さん(現・巨人コーチ)のようになってくれると期待しています」(稲嶺スカウト)
この後、巨人は奥川、西武は佐々木に票を投じた。森下と森は“一本釣り”でそれぞれ広島、DeNAに交渉権が確定した。

⇒当てた球団、外れた球団はその後?
次回19年ドラフトドキュメント④「ソフトバンクの“仕返し”」へ続く
(初出:【野球太郎No.033 2019ドラフト総決算&2020大展望号 (2019年11月27日発売)】)

執筆:尾関雄一朗
1984年生まれ、岐阜県出身。
新聞記者を経て、現在は東海圏のアマチュア野球を中心に取材。
多くの「隠し玉選手」を発掘している。中日新聞ウェブサイト『中日新聞プラス』でも連載中。
アマ野球関連のラジオ出演なども多数。

【書誌情報】
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