ドラフト候補の投球を捕球してその体感をつづる
「ブルペンキャッチャー・高森勇旗」。
今回は日本
ハムからドラフト2位指名を受けた本格派右腕・
立野和明(東海理化)をキャッチング。
2月20日のベイスターズとの練習試合でも1回を3人で抑えた立野の放つ魅力に迫る。
日ハムD2位:立野和明② 王道なフォームと王道なストレート
「今日、どんな感じで投げたらいいですか? 何球くらい投げればいいですか? 変化球は必要ですか?」
自分が投げることより、こちらの取材の「取れ高」を気にする選手は初めてかもしれない。こちらのことは気にすることなく、自分の調整に適したピッチングでいい、と伝えると、「わかりました」と言ってピッチングに入った。非常に律儀な男である。
立ち投げの1球目。真っすぐな縦回転のボールがミットに収まる。
「おぉ? これは王道だ」
クセのないフォームに、真っすぐ上から振り下ろされる右腕。ボールの伸びは驚異的で、捕る時はイメージよりも少しミットを上に置かないと、うまく捕れない。伸びがあって、力強い。
大きな体を非常に柔らかく使ってボールをリリースしてくる。ゆえに、ボールは繊細である。プロ1年目、1学年上の先輩だった山口俊さん(現巨人)のボールを受けた時と同じ感覚である。
9球の立ち投げを終え、ピッチングに入った。
このカットボールは……!
これだけ恵まれた体を、しかも柔らかく使えるのである。ストレートが一級品なのは、ある意味当たり前とさえ思えてきた。しかも、目の前のこの投手はすでにプロから指名されている。これくらいで驚いてはならない。しかし、次に投げるカットボールは、十分驚くに値するボールだった。
「これは……! 久しぶりに、本格的なカットボールだ!」
これまでも、カットボールは何度も受けてきた。しかし、そのほとんどが「速いスライダー」か「小さいスライダー」だった。回転もスライダーとほとんど同じで、バッターが「カットボール」と認識するかどうか……というボールも多い。
そんな中で、立野投手の投げるカットボールは、紛れもないカットボール。スライダーとはまったく違う軌道を描く。ストレートと遜色ないスピードで、真横に「滑る」。沈むどころか、むしろ浮き上がるような軌道で横に動く。
回転もスライダーとは違い、斜めに高速に回転している。恐らく、ボールの握り自体も、スライダーとカットボールでは明らかに違うのだろう。そう思えるほど、このボールはいい。
左バッターのインハイに文字通り食い込む。このボールをしっかりとコントロールされたら、左バッターは本当に苦しくなる。
これだけ体に近いところに投げられて、しかも曲がってくるとなると、まずバットに当てられない。その上、当たってもファウルにしかならない。
2球連続で投げられれば、かなり高い確率で2ストライクが確定する。恐ろしいボールだ。
その後、カーブ、スライダーと変化球をそれぞれ受けたが、どれも非常にレベルが高い。これだけ腕を真っすぐに振れるのだから、カーブがいいことは想像がついた。きれいに縦に割れて、ボールもしっかりと抜けてくる。
緩急をつけるには申し分ない。スライダーも、変化の幅がしっかりと取れているため、空振りも取れるレベル。
そして、なんといっても特筆すべきはスプリット。とにかく、球速が速い。指で挟むボールで、これだけのスピードを保てるのは、指先の感覚が相当研ぎ澄まされているのだろう。ボールの落ち方も素晴らしい。左バッターに対して、あのカットボールとこのスプリットがあれば、無敵である。
次回、「立野和明:③とにかく、柔らかい」へ続く
(初出:【野球太郎No.033 2019ドラフト総決算&2020大展望号 (2019年11月27日発売)】)
(捕球・文=高森勇旗)
1988年生まれ、富山県高岡市出身。
岐阜・中京高~横浜(DeNA)。高校時代は強打の捕手として注目され、2006年高校生ドラフト4巡目で横浜に入団。2009年にはファームで打率.309、15本塁打を記録するなど期待されたが、2012年に戦力外通告を受け退団。『野球太郎』No.006よりスポーツライターとしても活動を開始した。
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公開日:2020.02.28
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