がっつり!プロ野球厳選ライター陣が贔屓球団の今季を綴る”私的コラム”俺と12球団と2021年
プロ野球12球団、それぞれを愛してやまない書き手たちに、喜びや悲しみ、怒りなど思いの丈を思いっきりぶちまけてもらうこの企画。お待たせしました!2年ぶりの復活です!果たして2021年の書き手たちは、どんな〝思い〞を綴るのか
俺とジャイアンツと2021年/書き手・福嶌弘
●どこかで見たようなデジャヴが…
カネに糸目をつけず、豪華食材をふんだんに使って最高のコース料理を作ろうとした結果、一番おいしかったのは自宅の畑で採れた野菜で作ったサラダだった……2021年の巨人を一言で表すとしたら、まさにそんな感じだろう。それでも61勝62敗20分の3位とは思わなかったけれど。
2年連続でリーグ優勝からの日本シリーズ4連敗。今年こそは日本一になるぞとばかりにいつになく大盤振る舞いの積極的な戦力補強を展開。FA戦線ではDeNAから梶谷隆幸だけでなく、「Cランクだから」という理由で井納翔一も引っこ抜くと、主砲候補としてテームズ、スモークとメジャー実績抜群の新助っ人も獲得。ただでさえ二冠王の主砲・岡本和真や丸佳浩、キャプテン・坂本勇人などの実績を持つ主力に加え、好調な上に伸び盛りの若手・松原聖弥もいる状況なのにゴテゴテに盛り付け、いつしか打線は長嶋第二次政権期のような重量級オーダーが完成。これで開幕からロケットスタート……と行けばよかったけれど、そうそううまくいかないのは90年代後半の巨人が証明しているわけで。
本来のメインディッシュとなるはずだった井納は開幕5戦目の対中日戦であっさりKOされて早々に2軍へ降格すると、期待の新外国人だったテームズはデビュー戦の守備でアキレス腱を断裂して即帰国。その片割れであるスモークもコロナ禍で家族が来日できないとなると6月末には退団。頼みの梶谷も5月末以降は故障がちで結局、開幕前にイメージしていた1番梶谷、2番坂本、3番丸、4番岡本……というベストオーダーが組めたのはシーズンでたったの10試合だけと全くの期待外れに終わった。
その一方で頑張ったのが昨年から在籍していた若手の選手たち。例えば3年目の髙橋優貴はスクリューを軸にした投球が冴え、3・4月の月間MVPを取ると、梶谷にレギュラーを奪われるはずだった松原もライトで存在感をアピール。そして外国人枠の関係で今季は2軍暮らしと思われていたウィーラーがあわや首位打者も狙えるのでは? というくらいに好調。これにレギュラー陣がかみ合ったことで7月終了時点では首位阪神とは2ゲーム差の2位。8月末には首位に立った。逆転優勝へラストスパートをかけるため、山口俊にハイネマン、そして暴行事件で出場停止となっていた中田翔を日本ハムから無償トレードで獲得と、相変わらず名前だけは立派な選手をかき集めたが……チームは9月以降、10勝25敗8分と大失速。
最大で15あった貯金もあっという間に食いつぶして優勝どころか4位広島に2ゲーム差まで迫られての3位。CSファーストステージで阪神相手にまさかの2連勝でファイナルステージに進出するも、ヤクルト相手にボッコボコ。何億もかけて作った重量打線が20歳の奥川恭伸に無四球完封を喫するなど、情けなさがこみ上げてくる。
投手陣を大きく疲弊させた中4日ローテなどいろいろ敗因はあるが、どの補強もすべて裏目に終わったのが最後まで響いたように思う。ファームに目を向ければイキのいい若手がゴロゴロいるというのに、それに目を向けずに補強選手に執心する……20年以上前の長嶋巨人の負の部分が甦ったかのような1年だった。
書き手・福嶌弘
1986年、神奈川県生まれ。バイク・クルマの雑誌の編集部を経て2015年からフリ ーライターに。幼少期より父が歌う「闘魂込めて」を聴いて育ったため、横浜出身ながら生来の巨人ファン。小誌のほかにも『アメリカ人を熱狂させる男 大谷翔平 100年に1度のSHO TIME』(ジーウォーク)などに執筆。
出典:『がっつり! プロ野球(30)』
『がっつり!プロ野球(30)』12月13日発売!
公開日:2022.01.24