Q. 植物の名は体を表す?
A. なにかに似て見えるのは人間の都合
サギソウ、マイヅルソウ、ハンカチノキ、ブラシノキ、ゾウノミミテンナンショウなど、動物の名や物の名がついている植物名があります。その植物の花がまるで動物や物の形にそっくりなことからつけられたケースも多いようです。
サギソウ(ラン科サギソウ属)は、ラン科の花の特徴である唇弁がシラサギの飛んでいる姿に似ています。マイヅルソウ(舞鶴草、ユリ科マイヅルソウ属)の名前は、ハート形の葉っぱが翼を広げた鶴に似ていたことからきています。
ハンカチノキ(ミズキ科ハンカチノキ属)の白いハンカチのように見えるのは、実は花びらではなく、葉が変化した苞ほうよう葉というものです。苞葉は2枚あり、それに覆われるように本来の小さな花の集まり (花序)があります。花の色素には、白色がありません。本当は、光が素通りして透明になるはずですが、光がハンカチの中で散乱して、ビールの泡のように白く見えます。太陽光には、有害な紫外線もあり、ハンカチは日除けの役割を果たしています。この部分には紫外線を吸収してしまう色素が多いので、紫外線除けにもなります。
ブラシノキは、オーストラリア原産のフトモモ科の植物です。赤い部分は花弁ではなく、花糸とよばれる長い糸状になったおしべです。本来の花は緑色をしていて目立ちません。花糸を含む花全体がブラシのように見えることから和名がつけられました。
ゾウノミミテンナンショウは、テンナンショウ(天南星の意味)属サトイモ科のなかまです。葉が変形した苞は仏ぶつえんほう炎苞とよばれ、ラッパ状となり、中にたくさんの小さな花があります。大きくなった2枚の苞を後ろから見ると、まるでゾウの耳のように見えます。
そっくり植物図鑑
サギソウとゾウノミミテンナンショウ
ハンカチノキ
ブラシノキ
なにかにそっくりな植物は特にランのなかまに多い。まるで猿の顔のような花のドラクラ・シミア、人形がたくさんぶら下がったような花のオルキス・イタリカなど。もちろんラン以外にも、ここで紹介したようなそっくり植物がある。
この見た目がすごい
なにかに似ているといっても人間から見た場合の話。それぞれの植物は、それなりの目的があって、そういう形をしているのであり、これも生き抜く知恵のひとつ。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話』監修:稲垣栄洋
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話』
監修:稲垣栄洋
シリーズ累計300万部突破の大ヒット「眠れなくなるほど面白い」図解シリーズに、【植物学】が登場!
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図とイラストで、ひとめで植物の生態としくみがわかります。
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「花の女王はバラ、では雑草の女王は?」「なぜ夏の木陰はヒンヤリするのか?」
「昆虫と植物は必ずギブ&テイクの関係なのか?」「植物は数学を知っている?」
「じつは、植物によって光合成のしかたが違う?」
など身近な疑問から、花粉を運ばせるための昆虫だましテクニック、
一歩踏み込んだ光合成のしくみまでわかりやすく紹介します。
監修は、植物学者・静岡大学教授の稲垣栄洋先生!
植物たちの巧みな戦略とたくましい生き様が見える一冊です。
公開日:2025.02.01