故障の予防がパフォーマンスアップにつながる
子どもの頃に野球を始めて以降、週末になると朝から夕方まで長時間練習をしてきた人は少なくないと思います。熱心に取り組む姿勢は素晴らしい反面、長い時間全体練習することは、必ずしも上達につながるわけではありません。
本書のテーマは「毎日50分」のトレーニングで投球パフォーマンスをアップさせることです。短時間で集中して取り組むメリットはたくさんあり、その一つは自分で使える時間が増えること。チームの全体練習は目的を持って行われていると思いますが、選手個々で課題は異なるので、自分と向き合う時間も大切です。
加えて、練習時間が50分に限られることで、リカバリーにかける時間も短くて済みます。長時間練習では疲労も蓄積されるので、それだけ回復するための時間が必要になります。
リカバリーやコンディショニングは非常に大切ですが、この点が疎かにされているチームは決して珍しくありません。特に大会で連戦になると、勝ち抜くポイントは疲労からいかに回復し、次の試合をいいコンディションで迎えられるか。これがうまくできないと、大会日程が進むにつれて選手たちのパフォーマンスは極端に落ちていきます。
そもそも日頃からリカバリーが足りていないと、ハードなトレーニングをできません。低調なコンディションで厳しい練習をしてもレベルアップにつながりにくいですし、疲労がたまって故障のリスクになってしまいます。
故障予防の重要性は言うまでもないと思います。章では日常的にできるメニューを紹介していきますが、その前に、ケガをしないことはなぜ大切かを改めて整理しましょう。
故障をすると、練習やトレーニングを十分にできなくなります。言い換えれば、パフォーマンスをアップさせるための時間が減るということです。
アクシデントを除き、故障するのは身体の使い方に何らかの問題がある場合がほとんどです。つまり、自身のポテンシャルを十分に発揮できていないということ。逆に言えば、トレーニングで課題を克服しながら自分に合った投球フォームを身につけていけば、故障リスクの低下にもつながります。
普段のリカバリーやコンディショニングを疎かにした場合、身体機能が低下し、パフォーマンスラインに影響が出ることもあります。例えば右投げの投手で、「軸足に乗れ」というコーチの指導が合わないとします。こうした投手が左足を捻挫し、痛みが少し残ったタイミングで投げてみると、「軸足に乗る」投げ方がはまるケースが見られます。左足が機能低下を起こして使いにくくなり、軸足に乗れるようになったのです。
ただし、軸足に乗る投げ方が合うのは、あくまで一時的です。左足が回復すると身体のバランスが元に戻り、どうやって投げればいいのか迷い込んでしまう場合が少なくありません。
大事なのは、適切なリカバリーやコンディショニングで身体機能を維持し、自分の投げやすい投げ方をできる状態を整えておくこと。そうした基盤があって、初めてパフォーマンスを最大限に発揮することができます。
故障予防は誰にでもできる努力です。投球パフォーマンスや成長の土台になるものなので、普段から意識的に取り組んでください。
出典:『革新的投球パフォーマンス』高島誠
『革新的投球パフォーマンス』
著者:高島誠
「高校生なら誰でも140km/hを投げられるようになる」という命題に明確な回答をする超実践本!近年成長著しい広島県私立武田高校で強化メニューを担当するトレーナーの高島誠の下には、山岡泰輔投手や高橋礼投手というプロの投手たちもシーズンオフにトレーニングにやって来ます。高島はどんな指導をして成長に導いているのか。その考え方や練習&トレーニング方法を写真とQRコードで詳しく解説!
公開日:2022.01.06