背番号123――。まだ“育成選手”ながら今季、ファームの舞台で躍動したのが森遼大朗だ。プロ4年目の今季、イースタン最多勝となる10勝をあげ、同2位の勝率.667、87奪三振を記録。近い将来の支配下登録、さらに一軍デビューを視野に入れる期待の若手右腕に、飛躍を遂げた1年間を振り返ってもらった。
美馬投手に教わったフォークを
武器に、二軍で最多勝を獲得!
――プロ4年目の今季。10勝をあげてイースタン最多勝。率直にどういう手ごたえを感じていますか?
森 自分で思い描いていたような投球が出来たような、出来なかったような一年間でした。ただ、10勝、最多勝という結果は良かったなと思っています。
――「出来なかった」部分もあった?
森 もうちょっとやれたのかな、という思いはあります。数字の面でも、もう少し頑張ればタイトルも増えたかもしれないなと。
――逆に「出来た」ところは?
森 今年、自分の軸として投げられるようになったフォークが上手くハマって、その部分では自信を持って投げられるようになったなと。
――「フォーク」については美馬学投手からのアドバイスがあったとか?
森 春季キャンプが終わって浦和に帰ってきてから教えてもらったんですけど、それが自分の中でもすんなりハマりました。
――具体的にはどういうアドバイスがあったのでしょう。
森 自分が今まで思っていた感覚とは真逆でした。それまでは思いきり力を入れて腕を叩きつけるように強く振るイメージで投げていたんですけど、美馬さんからは「腕を振るな、力を入れるな」とアドバイスをもらいました。すごく新鮮でしたけど、そのイメージで投げたら自然と低めに落ちる軌道でボールが行くようになった。落とすことや低めを「意識」しなくても、その投げ方なら勝手にボールが落ちてくれる感覚です。
――昨季まではフォークはそこまで自信のある球種ではなかった?
森 あまり多投することもなくて、見せ球で使う程度でした。それが一気に「軸」の球種になったので大きかったですね。シーズン中には欲が出て上手くいかない事もあったんですけど、美馬さんが浦和にいるタイミングでキャッチボールをしてもらったり、チェックして頂けたのも助かりました。
――プロ1年目から今季までを振り返ると、順調に成長曲線を描けているのかなと感じます。
森 プロに入った当初は、まずは3年以内に支配下に上がりたいという気持ちでいました。でも、2年目まではケガも多くてなかなかシーズン通してプレーすることが出来なかった。今季の結果は良かったかもしれないですけど、目指していたものとは少し違うかもしれないです。
――ただ、今季の結果で「支配下登録」も見えてきたのでは?
森 今年やってきたことは自信にもなりましたし、これを来年も続けていければチャンスはあるかなと思っています。
故郷・宮崎のファーム選手権で
つかんだ手ごたえと自信
――今季でいうと7月20日の日本ハム戦で公式戦初完封、ファーム日本選手権での好投など、思い出に残る試合がいくつもあったかと思いますが、特に印象深い試合を挙げるとすればどの試合でしょう。
森 やっぱりファーム日本選手権ですね。地元の宮崎で投げることができたのがうれしかったです。
――試合は敗れてしまいましたが、森投手は7回無失点の好投で優秀選手賞を獲得しました。
森 両親も球場に呼んで、親戚や友人もたくさん来てくれたみたいだったので、目の前で自分なりに良い投球が出来たのは自信にもなりましたね。
――地元・宮崎で言うと、森投手の高校時代、同地区にある都城高校の1学年上に山本由伸投手(現オリックス)がいました。当時から面識はあったのでしょうか。
森 練習試合など、何度か対戦した経験もあったので自分は一方的に知っています。ただ、山本さんが僕のことを知っているかは分からないです(笑)。
――なるほど(笑)。とはいえ、同じ地区でしのぎを削った投手が今は日本を代表する投手になっている。刺激になるのでは?
森 高校時代から知っていますし、1年目から一軍で投げたり、その後もすごい結果を残している。自分もあんな投手になりたいという気持ちはありますね。
――ドラフトの同期でいうと1位の安田尚憲選手や、同じ育成指名で入団した和田康士朗選手が一軍で活躍しています。同期の選手は森投手にとってどういう存在?
森 刺激を受けますし、自分も早く同じ舞台に挙がってプレーしたいという気持ちにさせてくれますね。
――プロ入りから4年間“育成選手”としてプレーしていますが、プロの世界の厳しさを感じることはありますか。
森 育成で3年間やってダメで、再契約してもらいましたけど「今年ダメなら終わり」という気持ちでシーズンを過ごしてきました。そう位置付けたシーズンでこういう結果を残せたので、今は前だけ、上だけを向いていこうと思っています。
――これからやってくるオフシーズンの課題は?
森 まずは1年間を戦い抜ける体を作って、そこから支配下になるためにアピールしていけるところを強化していく。もちろん、足りない部分も補っていくようなオフにしたいです。
――“アピールしていけるところ”というと?
森 自分はあまり感情を表に出すタイプではないんですけど、そこで生まれるリズムの良いピッチングだったり、配球、打者に向かっていく姿勢を、ファンの皆さんにも見ていただきたいです。そのためにも一日でも早く一軍に上がって、たくさんの人に自分の投球を見てもらえるように頑張ります。
――ありがとうございます!支配下デビュー、ZOZOマリンスタジアムのマウンドで森投手のピッチングを見られるのを楽しみにしています!
収録:2021年11月19日
インタビュー及び記事執筆:花田雪
協力:千葉ロッテマリーンズ
公開日:2021.11.30