がっつり!プロ野球厳選ライター陣が贔屓球団の今季を綴る”私的コラム”俺と12球団と2021年
プロ野球12球団、それぞれを愛してやまない書き手たちに、喜びや悲しみ、怒りなど思いの丈を思いっきりぶちまけてもらうこの企画。お待たせしました!2年ぶりの復活です!果たして2021年の書き手たちは、どんな〝思い〞を綴るのか
俺とタイガースと2021年/書き手・花田雪
●「Vやねん!」再来も未来は明るいはず!
のっけから私事で恐縮だが、今年の夏場、編集者として当時独走体制を築いていた阪神タイガースの「特集本」を制作した。矢野燿大監督をはじめとした主力選手のインタビューなど、球団にも協力体制を敷いてもらい、満を持して発売にこぎつけたのだが、発売後、SNS上で気になる言葉を目にすることになる。「これ、Vやねんの再来やないか」「この雑誌、まんま『Vやねん』だけど大丈夫?」
阪神ファンであれば誰もが知っていることだが、「Vやねん」とは2008年、今季以上にセ・リーグを独走していた阪神を特集して日刊スポーツが発行した雑誌のタイトルだ。そしてこの雑誌の発売後、阪神はまさかの急失速を見せ、ファンに史上最大級のトラウマを植え付けたのだ。まさか自分が編集した雑誌があの「Vやねん」と比較されるとは夢にも思わなかったが、SNS上の予言は的中することになる……。
その意味では、勝手に阪神V逸の責任を感じていたりもするのだが、私自身は小学校時代から阪神一筋であり、こんな未来が待ち受けているとは想像すらできなかった。とまぁ、気付けば今季も優勝を逃し、2年連続セ・リーグ2位。クライマックスシリーズでは嫌な予感が的中して巨人にあっけなく連敗と完全な「尻すぼみ」シーズンとなってしまった阪神だが、その未来は決して暗くはない(と信じたい)。
改めて振り返りたいのは、やはり新人・佐藤輝明の存在だ。「いまさら」感が強いのは百も承知だが、いま一度、彼の残したルーキーイヤーの成績を振り返ってほしい。126試合に出場し、打率・238、24本塁打、64打点、三振173。後半戦の大スランプで微妙に「期待外れ」に終わった雰囲気すら漂うが、どう考えてもルーキーとしては超一級の成績ではないか。
本塁打は田淵幸一の球団新人本塁打記録を上回り、左打者としては新人歴代最多。栗林良吏(広島)、牧秀悟(DeNA)がすごかったのは間違いないが、「スケール感」なら佐藤が新人ナンバーワンだ。プロ野球野手ワーストの打席連続無安打や、新人歴代最多の173三振も、数年後には長嶋茂雄の「デビュー戦4三振」のような伝説のひとつになっているはず。
お世辞抜きに今季、「全打席を動画でチェックしておきたい」と思わせてくれたのは海の向こうで46本塁打をかっ飛ばした大谷翔平(エンゼルス)と佐藤だけだった。矢野監督も、それがわかっているから打てなかろうが、三振を積み重ねようが、我慢して佐藤を起用し続けた。
『がっつり! プロ野球(30)』インタビューで松村邦洋さんが語ってくれたように、「佐藤輝明は阪神の希望」だ。 奇しくも、佐藤のバットから快音が聞かれなくなったのと同時に阪神が調子を落としたことからもわかるように、佐藤の存在はチームの勢いにまで大きな影響を及ぼす。
そのレベルの打者だし、来季以降は「阪神の顔」として今季の倍くらいは本塁打を打ってもらいたい……というか打ってくれるとマジメに思っている。阪神の生え抜き打者で30本塁打を記録した打者は、なんと掛布雅之さんが最後。2年目のジンクスなんて吹き飛ばして、今度こそ「Vやねん」の呪いなど、カッキーンと吹き飛ばしてほしい。
書き手・花田雪
1983年生まれ、フリーの編集者兼ライター。本誌編集担当。小学校3年時の少年野球チーム入団と「亀新フィーバー」のタイミングが完全に合致したことから阪神ファンに。チームの暗黒時代も重なり、不遇な少年時代を過ごす。ラッキーナンバーは新庄剛志の阪神時代の背番号「5」。
出典:『がっつり! プロ野球(30)』
公開日:2022.01.23