海外送金が「迅速」「激安」になった理由
これまで日本の銀行から、外国の銀行口座への送金は、送金額の1割近くも手数料がかかることがありました。たとえば、最初に日本の銀行で提示された「送金手数料」は確定していても、最後に着金した銀行では、中継銀行経由で次々に手数料が差し引かれ、送金額の6~9%も目減りしたうえ数日かかるボッタクリの仕組みだったのです。
これは、日本の銀行から送金する相手先の銀行が、直接コルレス契約(為替取引の条件を定めた契約)を結んでいないと、協定を結ぶ銀行間を経由するため、次々手数料が差し引かれたためです。
この非効率な銀行間送金システムは、ベルギーに本部を置く国際銀行間通信協会(SWIFT)が仲立ちしてたものの、銀行が儲かるので長年放置してきた制度でした。世界銀行の調査では、顧客が負担する手数料平均は6・8%にも及んでいたのです。2019年の世界銀行推計による海外送金額は7142億ドル(約78・5兆円)でしたから、銀行はボロ儲けができたゆえんです。
これに風穴を開けたのが、英国に本社を置くトランスファーワイズ社でした。2011年に英ポンドとユーロ圏で送金サービスを始め、今や世界80か国で取扱額は1日平均200億円以上の規模です。日本でも2016年からサービスが始まり、手数料は0・7%で送金は24時間以内です。
このシステムは、銀行業の免許をもたない闇営業の地下銀行の送金システムとそっくりです。世界中の銀行にトランスファーワイズの口座を作り、ネットで口座情報だけをやり取りする仕組みだからです。この会社の創業者で共同CEOのクリスト・カーマン氏はIT先進国エストニア出身で、数学とコンピュータの専門家だったのです。
出典:眠れなくなるほど面白い 図解 経済とお金の話
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 経済とお金の話』
神樹 兵輔 著
日本社会をとりまく環境は日々変化を続けています。特にここ数年、令和の時代に入って、日本も世界も大きな変化が起こっています。日本の経済を知ることはイコール「世界や社会の今」を知ることにもなります。本書は〝経済のことは難しくてよくわからない〟というような人たちに向け、最低限知っておきたい経済の基本を身近なテーマと共に解説、読み解く一冊です。行動経済学から、原価や流通や利益のしくみ、生活に密着した経済の疑問や問題点など、いま知っておきたい経済やお金のことを、図とイラストでわかるやすく解説していきます。経済のしくみや原理原則を理解しないまま日常生活を過ごしていると損をしてしまうことになってしまいます。賢く今の世の中を生き抜くためには、世の中の動きやそこに潜む経済のメカニズムを理解することは必要不可欠なものです。
公開日:2022.02.24