大和朝廷にとって出雲が強敵だったから
ここでいう特別扱いとは、『古事記』『日本書紀』の神話において天皇の祖先神の神話でもないのに、出雲の神話だけが多くのページ数がさかれて掲載されているということです。『日本書紀』ではそれほどのことはないのですが、『古事記』では、実に神話のうち4割が出雲の話なのです。
いうまでもありませんが、神話が伝わっていたのは出雲だけではありません。「風土記」は5カ国分しか現存していませんが、それらを見るだけでも、地域ごとに豊かな神話があったことがわかります。なぜ、『古事記』は出雲神話だけをこれほど“厚遇”しているのでしょうか。それは大和朝廷にとって出雲が最大の強敵だったためです。具体的な記録は残っていませんが、出雲を朝廷の支配下におくまでには大きな犠牲が払われたことと思われます。克服した敵の強力さを示すために、多くのページが使われているのです。
同時にそれは、そんな相手を倒した皇祖神の偉大さも示すことになるのです。さて、『古事記』『日本書紀』の出雲神話は、スサノオを子孫からオオクニヌシが登場するところから始まります。オオクニヌシはたくさんの兄(八十神)の迫害を受けますが、根の国でスサノオの試練を受けて強い神様となり、地上の王となります。そして、スクナビコナ(少名毘古那神)・オオモノヌシ(大物主神)の助けを得て地上を開発します。『播磨国風土記』などによれば、医薬のことを人々に広めたともいいます。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 神道』監/渋谷申博
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 神道』
著:渋谷 申博
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公開日:2023.01.15