2023年、千葉ロッテマリーンズのブレイク候補と言えば、多くのファンがこの男の名を挙げるはずだ。山口航輝――。高卒4年目の昨季はチーム最多の16本塁打。豪快な打撃と打席での佇まいは早くも風格すら感じさせる。
キャンプから好調をキープする「和製大砲候補」に、昨季残したインパクトと、今季に向けた取り組みを聞いた。
「ホームラン数にこだわりたい」
山川穂高との自主トレでつかんだもの
――春季キャンプを経て実戦機会も増えてきたタイミングですが、現時点での手ごたえを教えてください。
山口 順調に来ていると思います。キャンプインしてからも体の状態は良い感じですし、今年はオフから調整も上手くいっているので手ごたえも感じています。
――プロ4年目の昨季はチーム最多の16本塁打。飛躍を遂げたシーズンになったと思うのですが、そこからさらにレベルアップをするためにオフ、自主トレはどんな取り組みを行ってきたのでしょう。
山口 今年はホームランの数にこだわっていきたいと考えています。そのために何をすべきか、秋季キャンプからずっと取り組んでいます。自主トレでは山川さん(穂高/埼玉西武ライオンズ)とご一緒させて頂いてスイングを見直したり、新しいトレーニングも取り入れています。特に意識しているのは「お尻」です。シーズンが終わったときからお尻の重要性は実感していて、トレーニングはもちろん、使い方も意識していました。
実際に山川さんに話を聞いてもお尻の使い方を大事にされていると言っていたので、自分が考えていたことは間違っていなかったんだと確信することもできました。
――山川選手は他球団の選手でもあり、年齢も9歳離れています。あまり接点はないのかな? と思ったのですが自主トレに参加した経緯を教えてください。
山口 2021年に自分が一軍の試合に出るようになってから、ちょこちょこ声を掛けてもらうようになって、昨年の春先に「来年は自主トレに来ない?」と誘っていただきました。それでシーズンが終わったあと、僕から連絡して正式に自主トレ参加をお願いしました。
――最初は山川選手からの誘いだったんですね! きっと山口選手に自分と同じような才能だったり、においを感じたんでしょうね。
山口 どうなんでしょう……。それは僕にはわからないので、山川さんに聞いてください(笑)。
――実際に山川選手と自主トレをともにして、感じたものがあれば教えてください。
山口 まずはすごく頭の良い方なんだなと思いました。動作ひとつとってもしっかりと考えていて「一流の選手はこんなに考えてバッティングしているのか」と。僕自身はそれまで、「ボールが来たら強く振ろう」くらいしか考えてこなかったので。
――練習だけではなく、会話ひとつでも勉強になる。
山口 はい、奥深い話をたくさんして頂きました。印象に残っているのは「再現性」の話です。僕自身はすぐに実践できるようなレベルではないけど、バッティングの再現性を高めることはホームランの数だけでなくすべての要素に絡んでくるので、少しでも山川さんに近づけるようになりたいです。
――2023年のプレーに確実に活きる経験ですね。
山口 はい、絶対に活きると思いますし、活かさなきゃダメだと思っています。
3打席連発を「ゾーン」で終わらせてはいけない
――昨季の話も聞かせてください。シーズン成績は102試合の出場で打率.237、16本塁打、57打点。この結果をどう振り返りますか?
山口 シーズン序盤は試合に出ることすらできずに悔しい思いをしました。16本という数字は普通に考えたら大したことないですが、去年の自分を考えるとすごく大きな数字です。もちろん満足はできないですが、「まずまず」だったかなと思います。ただ、本塁打だけでなく打率も打点も、もっと数字を上げていかなければいけないとも思っています。
――数字はもちろんですが、昨季の山口選手は「インパクト」の大きな一打を放っていたことも印象的でした。まずは9月22日のオリックス戦。この試合では1試合3本塁打、8打点と大爆発しました。
山口 簡単に言ってしまえば「ゾーンに入っていた」という感覚です。1打席目で当たりそこないの打球が運よくタイムリーになって、そこでまず気持ちが楽になりました。2打席目にホームランが出たときは、「どのポイントでどう打ったらホームランになるか」が感触として残っていて、2本目、3本目は頭の中でも「どんなボールを、どうやってホームランするか」というイメージまでできていましたね。
――まさに「ゾーン」ですね。
山口 ただ、今年からはああいう経験を「ゾーンに入った」で終わらせてはいけないと思っています。
――というと?
山口 「なぜ打てたのか」を理解しないと、それを継続できないからです。「ゾーンに入ったから打てた」ではなく、自分の打席をしっかり説明できるようにする。そうすれば、山川さんもおっしゃっていた再現性も高まると思います。
――なるほど。結果に対しての理由付けを「ゾーン」という曖昧な表現ではなく、理論的に説明できるようにならないと、再現はできない。
山口 はい。そうすることで数字も残せると思うので。
――山口選手が昨季残した「インパクト」というともうひとつ、10月2日のソフトバンク戦で放った逆転3ランも欠かせません。ソフトバンクにとっては勝てば優勝という大一番。あの一発が結果的に昨季のパ・リーグ優勝チームを「変える」ことになりました。
山口 前の打席でもチャンスで回ってきて、中途半端なスイングで三振してしまっていたんです。なのであの場面ではどんなボールが来ても自分のスイングをしようとだけ考えていました。
――それが結果的に、最高の結果につながった。
山口 やはり目の前で胴上げを見るのは嫌でしたし、それは僕たちだけでなく球場に応援に来てくれていたファンの方も同じだったと思います。チームとして「優勝」はもうないという状況でしたけど、最後にああいう結果が出せて良かったなと。
――それこそ、プロ野球史に残るようなドラマチックな一発でした。
山口 僕自身、ホームランまでは考えていなかったので打った瞬間、ホームベースを回っている瞬間は「あれ……なんか、場違いなことしちゃったのかな……」という気持ちも正直ありました(笑)。
――最後に改めて今季について伺います。いろいろなメディアで「30本塁打」という目標を口にされていますよね?
山口 30本はそんな簡単に達成できる数字ではないので、大きな目標という意味で口に出しています。まだまだ自分が到達できるとも思っていないですけど、だからこそ目指すべきだし、口に出すべきかなと。そうすることで成長も出来ると思っています。
――とはいえ、キャンプからの好調ぶりを見ると、周囲はどうしても期待してしまいます。
山口 もちろん、絶対に達成できないとも思っていません。良い感覚をつかんで、それを継続していけば、30本打てるんじゃないかという自分への期待と、自信もあります。
――熾烈なレギュラー争いはもちろん、ファンはその先の「4番」にも期待していると思います。
山口 試合に出ることが一番なので打順にはそこまでこだわりはないです。ただ、昨年も4番で起用してもらうことがあって、やりがいを感じますし、チャンスで打てればチームの勝利にも直結します。もし任せてもらえることがあるなら、しっかり打って、チームに貢献できるよう打者になりたいです。
――ありがとうございます! 今季の活躍を期待しています!
収録:2023年2月22日
インタビュー及び記事執筆:花田雪
協力:千葉ロッテマリーンズ
公開日:2023.03.06