昨季、1985年以来38年ぶり2度目となる日本一に輝いた阪神タイガース。その指揮官・岡田彰布はチームを率いる上で、どんな思いを抱いていたのか。
開幕を控え、この3月に上梓される書籍『普通にやるだけやんか~オリを破った虎~』(発行:Gakken)からその一部を抜粋してお届けする。まずは書名ともなった「普通にやるだけやんか」に込めた想いから。
普通にやるだけやんか
2023年のシーズン中、おれは何度も「普通にやればいい」という言葉を繰り返した。特に意識して口にしたのではなく、ほんまに「普通にやるだけやんか」と思うとったよ。
おれは「ヒットを打て」とか「三振を取れ」とかは言わんよ。できることをしろと言うだけ。だから四球が増えたというのも、チームにとってどうするのがええか、当たり前に自分のできることを考えるだけやん。
特にCSから日本シリーズと続いた特別な舞台になればなるほど「普通に」を口にしてたなあ。「普通に」の言葉には2つの意味が込められているんよ。実力以上を求めないというのと、平常心を保てという2つの意味やな。
シーズンが進むにつれて、選手にもその考えが浸透したように思う。シーズン後の特番で、大山がこんなことを言うとった。
「普通にやればいいと言われて、ものすごく気が楽になった。普通にやって、いい結果が出ると自信になる。普通のレベルがどんどん上がっていった」
そういうことよな。「普通」のレベルは人によって違う。それでええんよ。
「普通」を野球のプレーに当てはめるなら、守りを重視する野球につながる。おれが求めたのはファインプレーではなく、堅実なプレーなんよ。投手はバックにファインプレーをしてもらうより、打ち取ったと思った球をちゃんとアウトにしてもらいたいと思うてる。
ゲッツーだ、と狙い通りに打ち取ったのに、ランナーが残ったらがっくりするわなあ。試合が崩れるきっかけになるのは併殺が取れずに、走者が残ったときなんよ。
ファインプレーに見えないのがファインプレー
近本の守備位置が前寄りになった。これは後ろの打球は追いつけるという計算があるからやな。だから前に落ちる球を警戒する。つまりは守備範囲が広がる。足を生かした守備範囲の広さが売りや。普通ならダイビングしてファインプレーになる打球も、余裕で追い付いてしまう。
「ぼくの守備でいうと、今季のファインプレーは少なかった。前に守っていたからです」
と本人も言うてた。守備範囲を広げたことでファインプレーより、ファインプレーに見せない守備で投手を助けた。
ーー次回【評価を変えれば、意識もチームも変わる】へ続く
出典:『普通にやるだけやんか~オリを破った虎~』著:岡田彰布 発行:Gakken
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
もう「アレ」とは言わない。そら連覇を目指すよ。
38年ぶりの“アレのアレ”に導いた虎の名将が、
いまだから明かす「岡田の考え」。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
★おれのほんまの気持ち、書くわ
「優勝して出たのは涙より感謝の言葉」
「出来ることを普通にやる、出来ないことをしようとするな」
「作戦はブランコに乗って考えた」
「短所を直すよりも長所を伸ばしてやる」
「采配とは失敗したときに慌てず対応すること」
「言葉よりも行動で信頼を伝える」
「大切なのは“引き出し”をたくさん持つこと」
書籍情報
『普通にやるだけやんか~オリを破った虎~』
著:岡田彰布 発行:Gakken
公開日:2024.03.14