Q. モンステラの葉はなぜ割れている?
A. 切れ込みはアポトーシス(細胞死)の表れ
手がかからないため育てやすく、インテリアとして部屋のアクセントにもなるモンステラ(和名はホウライショウ)は、観葉植物やギフトとして人気があります。
ハワイでは、モンステラの葉の穴や切れ目を通る太陽の光を「希望の光」としていたという言い伝えがあるそうです。
モンステラの葉は成長過程で、穴が開いたり、深く裂けたりします。原産地のジャングルではスコールがあり、この一時的な豪雨によって葉が破壊されるのを防ぐために、穴や切れ込みができるといわれています。
では、どのようにしてあの特徴ある葉の切れ込みができるのでしょうか。モンステラにとって、葉全体が雨や風でちぎれることを避けるには、何らかのメカニズムであらかじめ葉のところどころに切れ込みを作っておけば被害を防ぐことができます。そのような仕組みはどこにあるのでしょうか。
このメカニズムは、葉が成長する過程で細胞レベルで働いていて、切れ込みは、一部の葉の細胞が死ぬことによってできるとされています。
このように葉が切れるのは、アポトーシス(プログラム細胞死)によるものです。これは、生物の体を作っている細胞が成長するときや死ぬときの様式のひとつです。アポトーシスは、体をより良い状態にしておくため、積極的に引き起こされています。
たとえば、細胞が癌化するなど異常な状態が起こると、そのほとんどは放置されず、アポトーシスで異常な細胞を抑制しようとします。
アポトーシスは、生物にとってこうした大切な役目を果たし、体全体が生き続けるための細胞の「自殺」ともいえます。
1穴や切れ込みは成長の証
成長するとアポトーシスが進む
若い葉には穴や切れ込みはない
野生のモンテスラのなかまは、南米熱帯地域の薄暗いジャングルで生育し、大木の幹の周りに絡みつくツル性植物。ちなみにモンステラの花とミズバショウの花は、とてもよく似ている。
2動物にみるアポトーシスの例
人間の手のカタチができるのもアポトーシス
人間の胎児には水かきがあるが、成長するにつれなくなる。
オタマジャクシのしっぽがなくなるのもアポトーシス
動物が受精し、受精卵が細胞分裂を繰り返して成長する過程では、決まった時期に決まった場所でアポトーシスが起こり、生物の形態が変化していく。
この見た目がすごい
モンステラは常緑のツル性植物。大きく育つと花(白い仏炎苞と緑の肉穂花序)が開花する。果実はパイナップルとバナナを合わせたような味だという。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話』監修:稲垣栄洋
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話』
監修:稲垣栄洋
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監修は、植物学者・静岡大学教授の稲垣栄洋先生!
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公開日:2025.02.05