Q 光合成のしかたは、いくつもあるって本当?
A トウモロコシのような植物は、2段階に分けて光合成をする
イネやコムギをはじめとする多くの植物は、「C3型光合成」をする植物なので、「C3植物」とよばれています。C3型光合成とは、よく見かける一般的な植物が行う光合成のことです。
C3植物が光合成を行う葉緑体は、葉の葉肉細胞では発達していますが、ほかの組織ではあまり発達していません。
C3のCは炭素のことで、二酸化炭素を固定する反応で最初にできる有機物は、炭素を3個もつ「PGA(ホスホグリセリン酸)」なので、C3植物とよばれています。
これに対し、トウモロコシやサトウキビをはじめとする、高温環境で育つ植物には、「C4型光合成」をする「C4植物」とよばれる植物があります。C4植物はC3植物と違い、葉肉細胞だけでなく、維管束鞘細胞にも発達した葉緑体が存在し、2段階で光成を行うのが特徴です。
C4植物の場合、二酸化炭素を固定する反応で最初にできる有機物は、炭素を4個もつ「オキサロ酢酸」で、そのためC4植物とよばれています。
C3植物とC4植物の光合成の似ている点と異な点はなんでしょうか。
両者とも、最終的に糖を合成するという点は同じです。C3植物は葉肉細胞ですべての反応が終了して糖が合成されます。
一方 、C4植物は、葉肉細胞では糖をつくらず、いったんほかの有機物をつくり、前述の維管束鞘細胞に送ります。
C4植物には葉肉細胞に、「C4回路」があります。最初、二酸化炭素はここで固定されていくつかの化合物となって、最後は分解され、生じた二酸化炭素からカルビン・ベンソン回路で糖が合成されます。
C3植物の光合成、C4植物の光合成
C3植物(普通の植物)のしくみ
C4植物のしくみ(左はC4回路、右はカルビン・ベンソン回路)
C4回路とカルビン・ベンソン回路の位置
すごい!光エネルギー
C4植物は、トウモロコシやサトウキビなど、高温で強光な環境でも育つ重要な作物。C3植物と比べてC4植物は1日の光合成速度が速く、成長速度も速い。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話』監修:稲垣栄洋
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話』
監修:稲垣栄洋
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「じつは、植物によって光合成のしかたが違う?」
など身近な疑問から、花粉を運ばせるための昆虫だましテクニック、
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監修は、植物学者・静岡大学教授の稲垣栄洋先生!
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公開日:2025.02.27
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