プロ野球界『伝説の魔球』列伝
プロもうらやむ伝家の宝刀!この球を投げられたら絶対に打てない、打たれない。あまりの変化にバットが虚しく空を切る。人間離れした変化球。リスペクトをこめて、人はそれを「魔球」と呼ぶ…。
あの長嶋茂雄を悩ませた
カミソリシュート
●平松政次/横浜大洋ホエールズ
【魔球その3:シュート】
大洋が誇る巨人キラー「カミソリ平松」の異名をとった平松政次の決め球は、特に右打者の腹部をえぐるような内角へのシュートだった。ストライクゾーンからホームペースをかすめてポールになるシュートは、見逃せばストライク、振っても空振り、当たったとしてもファウルか内野ゴロ。その切れ味の鋭さから「カミソリシュート」と呼ばれ、当時の強打者たちから怖れられた。
「カミソリ平松」はこれが由来だ。このカミソリシュートを武器に、プロ通算201勝を挙げた。そのうち51勝が巨人からだ。特に長嶋茂雄には強く、通算打率を1割台に抑えている。あの長嶋をして「寝ても覚めても平松のシュートが頭から離れなかった」と言わしめた。同じシュート投手として一世を風靡したのは元巨人の西本聖だが、タイプはちょっと違う。西本のシュートのキモは変化量だった。平松の場合、若い時期こそ変化量に頼ったが、成熟期においては変化量より球の縦回転と横回転のバランスが整った、キレを武器にした高速シュート。当時にあっては、紛うかたなき魔球であった。
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公開日:2020.07.31