『伝授』第11回 返し馬の見方を伝授

俺は本質的にはパドックを最も重視しているが、年に数回は返し馬で様子を確かめたいと思う馬はいる。
では、どういう時に返し馬を見るのか、どこを見るのかを伝授しよう。

返し馬は馬場に出てきた時をチェック

俺が返し馬をしっかり見ようと思うのは、馬券を買おうかどうか迷っている時や、狙っていた馬がパドックだけでは判断しきれなかった時。
どういう感じで馬場に出てくるのか? 精神状態がどうなっているのか? 返し馬のおろしがけで、どういう仕草をするかだけはチェックするようにしている。
特に初めて見る馬や、結構人気になっている馬でちょっと危ないのではと思った時はよく見るようにしている。たまにパドックだけではわからないこともあるからな。

オークスでのカムニャックの返し馬

具体的には馬場に出た時に行儀が悪い馬は買いたくないなと思う。
ジョッキーに対して反抗するとか、全体的に見ている感覚で雰囲気が良くないので馬券を買うのを止めることもある。
まあ、俺は返し馬の段階までしっかり見なくても、馬場に出て歩いている雰囲気だけ見られれば基本的には充分。歩き方が良かったら良しとして、遠くまで行ってしまったのに双眼鏡を覗くまでして返し馬を見ることはない。なので、厳密に言えば「返し馬」というよりは「馬場入り」をチェックしていると言った方が良いかもしれない。
ちなみに、よく「返し馬で気合いが良くなってきたからいいですね」というコメントがあるけど、俺から言わせればパドックで悪かった馬が返し馬で急に良くなるわけがない。

返し馬のやり方は調教師の指示通りがほとんど

テン乗りのジョッキーが騎乗する時、だいたいは調教師が返し馬のやり方を指示する。
俗にいうテンションが高い馬とかは調教師の指示で強くやらないでくれと言われたりする。
返し馬を見ていると一般的な返し馬と違うことをしている場合がある。
その理由は色々で細かくは厩舎に聞かなきゃわからないが、ザックリと「何か悪い癖があるのかな?」と推測することはできる。

外国人ジョッキーはこの限りではない

例外的に外国人ジョッキーの場合は道中の抑えが利かせられるから、返し馬に関してもジョッキーに任せてしまうことが多い。
例えばテン乗りのモレイラ騎手は比較的、他のジョッキーの倍速くらいのスピードで走らせる。そうすることで、その馬の癖や能力がわかるとモレイラは言っていた。
テン乗りだと「癖を知る」というのが大事で、悪い癖があれば前もって調教師から言われていて、それを確かめるためにそういう返し馬をする。
少し脱線するけど、飼い葉に関しても非力なジョッキーが乗る時は、たくさん食べて馬が元気になりすぎると抑えられなくなる場合があるから、張り切り過ぎる馬だとレースの前は飼い葉を抑えることがある。
ただ、これも外国人ジョッキーが乗る時はおおよそ制御できるので、レース前でもバリバリ食べさせるケースもある。

モレイラ騎手の返し馬

返し馬をじっくり見て競馬を楽しむのもアリ

読者で、じっくり返し馬を見て判断したい人がいれば俺はそれを否定しない。
そもそも競馬というのは予想する段階で情報がなさすぎるし、馬のことなんてわからなくて普通だから「俺はこのスタンスで馬券買うんだ!」という考えでいい。
それで当たった時は「ヨシ!」と思うだけ。
昔に比べて情報量は多くなったけど、絶対的に正確な情報や予想などない。
テレビの解説者が「ディープインパクトやイクイノックスは不利がなければ勝てますね」と言っていたらそれは正解だけど、それ以外の多くの馬に関してはわからないのだから。
無責任な言い方かもしれないけれど、自分なりの返し馬の見方を見つけて競馬を楽しんでもらえれば、それがあなたにとっての正解だ。

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