言葉が足りていない「正面に入れ! 腰を落とせ! 両手で捕れ!」という指導【高校野球から逆算した少年野球デキる選手を育てる方法】

【習得レベル:★★☆☆☆】
<正確に教えたい、ゴロ捕り3つの基本>
野球をやってきた人間ならば必ず聞く「正面に入れ! 腰を落とせ! 両手で捕れ!」という指導。指導者の何気ないこの発言は果たして子ども達に正確に伝わっているでしょうか?
①正面に入れ
ゴロを捕る際、まず必要なのは「距離(バウンド)を合わせること」です。すなわち、目の距離感(遠近感)が大切になります。
正面に入れ、と言われた子どもはボールを身体の正中線(ど真ん中)で合わせようとします。目は左右の網膜に映る映像の位置の差を利用して感覚的な距離感や立体感を感じています。そのため、真正面ではなく少し角度がついた方が距離を合わせやすいため、真ん中にボールを合わせると距離感が合わないことがあります。
そのため、まずはボールとの距離感を合わせるために、グラブをはめている左手(以下右利きでの話になります)の位置でゴロの軌道に入ってみましょう。その方がボールとの距離感が掴みやすいはずです。距離が合えば次はステップとハンドリングですので、「正面に入れる」ようになります。
少年野球では、「正面に入れ」は「自分の身体の左前でボールを捕りにいくと正面に入れるようになる」と言葉を置き換えてみましょう。


②腰を落とせ
次に「腰を落とせ」についてです。学童野球ではゴロをトンネルした時に「腰が高い!」と言われることが多いと思います。でも、本当にそうでしょうか?
学童野球のトンネルのほとんどは「ボールに合わせて身体が上下してしまった場合」と、「バウンドを合わせられず恐怖で伸び上がってしまった場合」に起こります。
これを防ぐには、①で述べた通り、
・正面に入り過ぎないこと
・目線を上下させないこと
が大切になります。できるだけ顎を引いて、ボールを上目で見る練習をすると良いでしょう。


③両手で捕れ
「(グローブでボールを捕球したら)右手でフタをしなさい」という指導の言葉を聞きます。これは何十年も昔、まだグラブの形状が捕球に対して不十分だった時代はその通りでしたが、現代のグラブは片手で捕球することに適した作りになっています。むしろ、無理やり両手で捕りにいくと身体がロックしてしまい、ハンドリングの妨げにもなります。
あくまで、両手で捕るメリットは丁寧なのではなく「握り替えを速くする」ために右手を近くに持っていくことにあります。
「スローイングを素早く行うために両手でいく」という認識になります。捕球を優先するならば片手の方が捕りやすいことを覚えておきましょう。

もちろん、他にも様々な要素があると思いますので、単に上記のことだけが原因ではない場合も多くあると思います。①〜③が間違いというわけではないのですが、少年野球の現場では何となくニュアンスで発言する言葉が多いのは事実です。もっと具体的に言葉を使うことで選手に伝わると良いですね。
<豆知識>
少年野球の指導者は「ボールをよく見ろ!」と言ってしまいますが、私は禁句だと思っています。子どもは言われた通りボールを一生懸命見てしまいます。ボールを凝視するので周辺が見えず、余計に距離感が合わなくなり目線が上下してブレてしまうからです。これはバッティングにも同じことが言えます。
「よく見て捕れ!」「よく見て振れ!」は完全に逆効果になってしまうと思います。
(記事提供:ヤキュイク)
著:伊豆原真人
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