プロ野球師弟伝説
名選手の陰に名指導者あり!!名選手誕生の陰には、時に厳しく、時に優しく彼らを導いた恩師がいた…伝説に残る師弟の歴史を追ってみよう!!
優しさと愛情で結ばれた魔術師と天才
仰木彬×イチロー
●孤高の才能を理解した唯一無二の存在
仰木彬とイチローの出会いは1993年のウィンターリーグ。翌年からオリックスの指揮をとる予定の仰木がハワイを訪ねたときだった。当時、1、2軍を行き来していたイチローは、主力の田口壮と同席であったとはいえ、仰木の来訪とその人柄に触れてことのほか喜んだという。近鉄時代、野茂英雄の個性的なフォームを認め、才能を伸ばした経験のある仰木彬は、同様に個性あふれるイチローの素質と打撃センスを見抜き、1994年開幕直前に登録名を鈴木一郎からイチローに変更。その後、1軍スタメンで起用し続け、日本プロ野球新記録なる69試合連続安打、2015年に秋山翔吾に抜かれるまで、パ・シーズン安打数記録となる210本などを記録し、一躍スターダムに押し上げたことは語るまでもないだろう。
その後、イチローは「僕は仰木監督によって生き返らせてもらったと思っています。監督はたとえ数試合安打が出なくても、根気よく使ってくれました。その監督に感謝するためにも、いい成績を残したかった」と語り、メジャー移籍後に、世界的スターになった後でも、キャンプ中の仰木彬に会うために、宮古島まで出向くほどの感謝と尊敬ぶりだった。仰木彬は、2005年12月病床についた際、「20日にイチローと食事の約束をしている。それまでは生きさせてくれ」と訴えるほど、イチローを愛し、可愛がっていたが、残念ながらその日の約束をはたす前にこの世を去ってしまった。新聞記者の質問に、仰木彬を「僕の唯一人の師匠」と答えた孤高の天才イチローにとって、仰木彬は自分の理解者であり、親身に思いやってくれる優しい父のような存在だったのかもしれない。
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公開日:2021.01.30