神社は神様のため、お寺は人のための場所
ごく稀まれに、神社とお寺を混同されている方を見かけます。神社の境内で「いいお寺だなあ」と言ったり、本殿のことを本堂と呼んだり、お寺でも柏手*を打ってみたり……。明治はじめに神仏分離が行なわれ、神社とお寺は明確に区別すべきものとされましたが、なにしろ神仏習合は1000年以上の歴史がありますので、今もその名残りが社寺の様子にあって、紛らわしい面があることは事実です。筆者自身、「あれ、ここはどっちだっけ?」と思う神社・お寺をお参りしたことがあります。しかし、神社とお寺とでは、根本的に違うものなのです。ともに神聖な場所ですので、私たちは安易に「社寺」「寺社」とひとくくりにしがちですが、まったく性質が異なる場所なのです。
では、神社とお寺はどう違うのか。簡単にいうと、神社は神様のための場所であるのに対し、お寺は人のための場所なのです。お寺はもともと出家者が共同で修行をする場所でした。釈迦が在世の頃はその指導を受け、没後は修行経験が長い者が浅い者を導いて、共に悟りを目指していました。やがて釈迦に対する信仰が広まり、釈迦の像などを礼拝する場所へと変わっていったのです。これに対して神社は神様をお祀まつりするための場所です。境内にある建物や神宝、祭具などは、神様に快適にいていただくためのものといえます。いい換えれば、神社は神様のお屋敷・宮殿のようなものです。ですから、参拝は神様に拝謁を願うようなものといえます。身だしなみを整え、お清めをするのは当然のことなのです。
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 神道』
著:渋谷申博
「神道には教義がないって、本当なの?」「八百万の神々の中で一番偉いのは、誰?」「鳥はいないのに、なぜ鳥居というの?」 神道の起源から日本の神様、開運神社のご利益まで楽しくわかる! 古代から伝えられてきた日本の心──神道。その奥深い世界を57項目の素朴な疑問からズバリ解説しす。
公開日:2021.06.24