「ご乗車できません」は正しい言い方?
朝夕の混雑した電車のホームなどで駅員が「大変混雑しております。とくに先頭車両は、ご乗車できません」というようなアナウンスを聞いたことはないでしょうか。この「ご乗車できません」は違和感のある言葉です。文化庁が発表した「敬語の指針」では「ご乗車できません」は「ご乗車になれません」「ご乗車いただけません」が適切な言い回しであると書かれています。尊敬語の可能形は「ご(お)~なれる」ですから、否定形は「ご(お)~なれません」が正しい言い方になり、「ご乗車になれません」が問題のない表現となるとも書かれています。
乗車するのは利用客ですから、利用客に対して敬意を払うのであれば「ご(お)~いただける」という形になります。ですからその否定形である「ご乗車いただけません」が適切な言い回しということになるのです。
さて、「この改札口は明朝七時まで閉鎖です」といったアナウンスや告知がありますが、この「明朝」という言葉にも問題があります。「明朝」はその時点からみて次の日の朝という意味です。最終電車が発車する時間は、多くの場合は二四時を過ぎ、すでに翌日になっています。たとえば三月三日の最終電車は厳密には三月四日の午前〇時半や一時頃に発車する電車になるため、「明朝の朝」は次の日の朝ですから三月五日の朝という意味になってしまうのです。厳密に言えば「この改札口は明朝七時まで閉鎖です」ではなく「この改札口は翌朝七時まで閉鎖です」という文言が正しいのです。
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 大人のための日本語と漢字』
監修:山口謠司
「ニッポンとニホン使い分けは?」、「なぜ緑色なのに青信号?」「十二支の本当の意味とは?」、「間違って使うと恥ずかしい敬語は?」日本語と漢字にまつわる、とことん面白くてためになる話。単なるうんちくにとどまらない、使える日本語、生きた日本語から、日本人が覚えておきたいしきたりや文化、マナーまで幅広く紹介。図解でよりイメージができ、面白いほどかんたんに、日本語の興味深い「なぜ」と、正しい日本語の知識が増える1冊!
公開日:2021.07.15